SSS(高校1年生) 大阪府立大学 武田重昭先生 講演「持続可能なまちをつくるために」
- 2021.05.29
- 講演会
今日は大阪府立大学の武田重昭先生を実際にお招きし貴重なお話を伺う機会を持つことができました。ホールで密になる状態を避けるために、生徒はホールと教室2ヶ所に分かれ、3ヶ所をつないでオンライン配信を試みました。武田先生は緑地計画学(Landscape Architecture)を専門に研究され、多くのまちづくりの実例を通してシビックプライドの構築についても大変詳しく書籍や多くの講演等でも発信を続けておられています。本日は限られた授業時間内ということで、事前の生徒たちの質問にできるだけ答えていただけるようなスタイルの講演をご用意くださいました。
問い① 理想のまちってどんなまちですか?
●理想的なまちはどのようにできてくるだろう?
存在効果=空間の魅力(そこにその空間があるだけで発揮される)
利用効果=生活の魅力(人々が利用する)
空間の魅力+生活の魅力=まちの魅力
●媒介効果(空間を利用することで周辺にもどんどん波及していく効果)
こういった効果が生まれれば生まれるほど、魅力的なまちへ
どんな素敵な空間があっても使わなければ意味がない
私たちにはまちを使う想像力が求められている
問い② パブリックライフで私たちの暮らしは豊になりますか?
●プライベートな生活は豊かパブリックな生活は貧しい
日本で起こっている例:家の中は住み心地の良い空間、しかし外に出ると居心地が悪い
世界で起こっている人のための屋外空間(パブリックライフ)への生まれ変わりの実例
→通りを車のための空間から人のための空間へ
「パブリックライフ」を充実させるムーブメント
・NYブロードウェイ
・デンマーク コペンハーゲン
・オーストラリア メルボルン
●まず外に出よう!良いパブリックライフを体験してみないとわからない!
日本の美しい四季を感じてみよう
人々は屋外での暮らし、風景、そういったものを見てその街の魅力を感じている
パリのパブリックライフ、日常だが映画のワンシーン!?
パブリックライフを見る側の私たちも幸せに→心地良い空間の共有が生活を豊かに
●パブリックライフが大きく地域を変える可能性
・徳島県神山町:過疎化の地域からwfi環境を整え本社機能の移転、よい環境、清流で仕事
・和歌山県有田市:有田焼の窯元が屋外レストランを、世界から人が訪れるように
パブリックライフ=公共空間で他者と直接的・間接的に関わりを持ちながら過ごす社会的な生活
パブリックライフを育むのも人!屋外空間を使いこなす工夫、プロデュースが必要
●10000人の1回の大規模なイベントより100人の100回の日常的なできごととしてのイベントを!
一時的な盛り上がりより緩やかなベクトルを上向きに保つまちの発展の持続性を
にぎわいを作るのは簡単、1人でも豊かに上質な時間を過ごす空間を作ることは難しい
集団の喚起ではなく、他者を思いやるような関係性が生まれる空間
「離散的空間」
自立した人間であるとともに、連帯する人間でもあるような集合としての共同体(原 広司)
●協働VS共同:CollaborationからCommonへ
チームで力を合わせ1つの目標に向かうよりも、それぞれの人が思い思いに行動しながらも他者に対する連帯感や一体感があり一緒にいる価値を生む時代が来ている
問い③ なぜシビックプライドが必要なんですか?
シビックプライドを考えるとき、なぜ市民がまちづくりに関わることが必要なのかが答えになる
現状:日本の人口推移→減少(国土交通省白書より)
建設費予算の推移→新しいもの作れない、現存の建物の管理も難しい
●「新しい公」
国民・住民にも地域への貢献を求める社会
与えられることへの幸福感から自己実現で誰かに何かを与えることで幸福感を得る時代へ
行政が対応仕切れないことは住民同士でカバーする
●市民をアクティベート(起動)する
インフラは行政が担当しても、その先の細かいことは自分たちで解決するツール
「ラストワンマイル」細部は現場に一番近い人達が変えていく(デンマーク)
●まちをつくるのは、市民のまちに対する誇りや愛着!
本当のシビックプライドが必要な理由として思うこと
→まちを創るのは自分なんだという気概
まちをつくる一員なんだと思えるかどうか
・大阪城を造ったのは市民(全額市民の寄付で再建されている)
・市民吹田サッカースタジアムは市民や企業の寄付で建てられた
●シビックプライドがあるかどうかでまちの魅力は変わってくる
住んでいる地域に誇りや愛着をかんじますか?
→日本では半分の人達、欧米では7割8割
自分がこの都市を構成する一員であり、都市をより良い場所にするために関わっているという意識を伴う
つまりある種の当事者意識に基づく自負心といえる
●シビックプライドを育てるキャンペーン
you are your city (バーギンガム)
I LOVE NY(ニューヨーク)
BARCELONA BATEGA!(バルセロナ)
I amsterdam(アムステルダム)
日本の国旗掲揚?愛国心?とは違う
特に、I amsterdam 私自身が都市なんだという意識はさらに強い関わりを感じるもの
●都市と人とのコミュニケーションポイントをデザインする
コミュニケーションポイント:都市情報センター
都市を共感するアクティビティー、理解する情報のデザイン、アイデンティティを感じるシンボル、体験する空間のデザインを個別ではなく関係づけて1つのメッセージとして結びつける必要性 ヨーロッパのまちではどこにでもある組織
問い④ 多様な価値観をどうやってまちに活かすことができますか?
いろいろな人がいて、たくさんの個性をどうやって1つのまちに繁栄させていくのか
「みんなの公園」から「わたしたちの公園」へ
みんなのものだからと規制するのではなく、使うわたし達の立場に立った公園の運営
気持ちのコミュニケーションの大切さ、あり方
●まちの価値は人の気持ちによって変わる
まちをつくるプロは可能性を持った空間は提供できるが、実際に価値が生まれるかどうかはそこを使う人達にゆだねられる
まちつくり=人々の気持ちつくり
●これからのまちづくり
今までのまちは誰かがつくってくれたもの
ブラジリアの例:1人の都市計画課と1人の建築家が自分たちの理想によってつくったまち
→専門家による機能的なまちのはずが、住民にとって住み良い心地良いものではなかった
これからは、誰かにつくってもらうのではなく、自分たちがつくる
→もっとまちを好きに、身近に、もっと自分のこととして感じられるように!
武田先生のご研究の分野に関するお話は、街づくりを通して持続可能な社会について学び考察している生徒たちにとって、全てのキーワードが鮮明に印象に残り、大変興味深くそして貴重な学びの機会となりなした。今日は私たちのために、貴重なお話をしていただき本当にありがとうございました。