特別の教育課程の実施状況について

１．学校における自己評価

実施の効果及び課題

（１）特別の教育課程の編成・実施により達成を目指している目標との関係

本校の生徒は、学年の半数以上が帰国生徒であり、日本語に十分習熟していない生徒が多い。その対応として、多くの科目で２年生まで少人数での習熟度別クラスを編制している。また、さらに日本語の授業を行うことでも、日本語の不十分な生徒の指導を行っている。

高校1年生から保健の授業を行うと、日本語が母語でない生徒や、日本語力の不十分な生徒に対して充分な教育効果は期待できない。そこで、1年間の日本語力向上期間を経てから、高校2、3年生で保健の授業を行うことで本来の教育目標を達成できるものと考え特例申請を行っている。

特例申請2年目にはいり、今年度高校2年生が保健の授業を受講しはじめ、まだ2ヶ月しか経過していないが、他の教科同様に日本語力向上期間1年経過後の保健授業は、教育目標実現に大いに役立っているものと考える。特に本校の保健授業では、授業に耐えうる基礎的な日本語力を必要としたうえで、課題に対して議論するための情報を個人で収集し、考えを構築した上で、グループやクラスの中で他者との意見と照らし合わせながら、考えを修正、再構築していく形で授業を実施しており、学習内容を単なる「知識」としてでなく「主体的で対話的な深い学び」となるような展開を試みている。そのためには、少人数の習熟度別のクラスよりも一定のボリュームのあるクラス単位での実施が望まれる。

本特例により、「保健」の設置学年を第２学年からの２年間での履修とし、それにより３年間の習熟度編成ならびにカリキュラム編成が最も効率的な形で運用できることとなった。そのことにより、上述の教科学習の目標達成の実現が可能となっていると考える。

（２）学校教育法等に示す学校教育の目標との関係

保健体育科「科目保健」の目標である

①個人及び社会生活における健康・安全について理解を深めるとともに，技能を身に付けるようにする。

②健康についての自他や社会の課題を発見し，合理的，計画的な解決に向けて思考し判断するとともに，目的や状況に応じて他者に伝える力を養う。

③生涯を通じて自他の健康の保持増進やそれを支える環境づくりを目指し，明るく豊かで活力ある生活を営む態度を養う

との関係性は、特例対象の生徒が高校2年で保健の授業を受け始めてまだ2ヶ月の段階での評価はむずかしいが、（1）に示したとおり概ね教育内容については目的達成されていると考える。具体的には、「保健」の設置学年を第２学年からの２年間での履修とすることで、生徒の日本語力の問題で教育目標が達成されない点については解決されていると考える。特に課題に対して議論するための情報を個人で収集し、考えを構築した上で、グループやクラスの中で他者との意見と照らし合わせながら、考えを修正や再構築していく形で授業を実施できている点は目標に合致している。しかし、学習内容習得時期が1年遅れることの評価については今後の課題である。次年度、現在の高校2年生が2年間の保健授業を終えた段階で、その点を評価したい。

（３）課題の改善のための取組の方向性

学習内容習得の目標達成については、特例で達成されると考えるが、習得時期の問題については、特例では解決されない。この相反する課題をどう考え、解決する方策について現高校2年生が卒業する時期にあらためて評価を行いたい。

２．学校関係者（父母の会）評価

特例申請については、学年の半数以上が帰国生徒である、本校の状況に合わせてカリキュラムの編成・実施をしていることを理解し、内容も確認の上、同意いたします。

保健の授業が単なる「知識」ではなく「主体的で対話的な深い学び」となるような指導を試みられている点では他者の意見を聞き、自己の考えを深めていくことができると思いますので、大変実りのある学習になっていると感じます。

ただ、保護者にとっては、学校全体で日本語力が不十分な生徒の割合や日本語のレベルが分からないので、実際に保健の授業が理解できない生徒がどれくらいいるのかがよく分かりません。

また資料内に課題としても書かれていますが、習得時期が１年遅れることは大きなデメリットと考えます。2年間の詳しいカリキュラムはわかりませんが、高2まで待たず早急に伝えるべき内容もあると思います。さらに、高３のカリキュラムに保健の授業が入ることで、本来の高3で実施する学習内容に影響は出ないか、あるいは内容が浅くならないかが気になります。

2年間で学習する内容を高1から3年間かけて学習することで、習得時期の問題、語学力の問題をある程度解決できる可能性もあり、検討していただければと思います。