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SSD(高校3年生)【前半】SSDでの取り組み/リサーチブック作成に向けて

  • 2022.07.01
  • 授業

前回の講座で確認した通り、SSD(Sustainable Society Design)での最終目標は、これまでのSSS、SSRの取り組みの集大成としてリサーチブックを完成させることです。教員は指導をするというより、アカデミックな経験を積むうえでしっかり助言しアドバイスをするといった立場で皆さんと関わっていきたいと考えています。そのために、とにかく全員でよく話し合い、意見やアイディアを出し合い、それを一つの形にまとめてもらいたいと思います。

 

【自分たちのテーマを見つけよう】

●本年度の大きなテーマ

 

Sustainable City

Sustainable Development

 

●興味のあることは何だろう?

アイディアを引っ張り出そう!話をしよう!


山田教諭

私が興味のあるテーマは、Walkable Citiesです。持続可能な社会を考えたとき、書籍などを通して、車に依存する社会が環境や私たちの生活へ及ぼす悪影響を深刻な問題として再認識するようになりました。



帖佐教諭

実は以前は田舎に全く興味がありませんでしたが、まちづくりのリサーチを通してヨーロッパの地方都市をはじめとした個性あふれる素敵な田舎に関心を持ちました。日本では田舎が都会の劣化版であるようなさびれた場所となっていることに対して、美しい自然やその特色を活かして将来に向けた解決策があると感じています。


皆さんも、リサーチブックのトピックを考えるうえで、自分の興味や、持っているアイディア、以前からの疑問などを整理して、日ごろからそういったことに対して意識を向けて過ごしてみて欲しいと思います。

グループを作って意見を出し合い、自分たちの関心事項をホワイトボードに書き出してみることにしました。

 

 


生徒たちから出た様々なキーワード

Abandoned house, Language, Walkable cities, Mental health, Healthcare, Cost of living, Government support, GDP

シビックプライド、<アメリカ>・リストラ→働き方・裁判・カウンセリングが多い、中央集権化、空き家問題、<日本>・社蓄、ブラック企業、パワハラカウンセリング・お金のため-ゴールは?自分のしたいことなの?自分の生き方を考える機会少ない、<ドイツ>・移動遊園地・古い建物を大切にする⇔日本―木造建築多い、日本は多くが無宗教、ゾーニング、違う国の電車の雰囲気、賃金、福祉・社会・経済・人間関係の基盤、24時間営業、救急車、病院、教育

Racism, religion, renewable, equality, compact city, welfare, values, cultural importance, poverty, differences, education, a community, convenience

happiness, connections + reliance on others, Official roles in society, funds, wage

resource, tourism, investment, compromise, communication, equality, differences, cultural importance, happiness, private, public, resources, government support, policy


次から次へと書き出す生徒たち。あっという間にホワイトボードは生徒たちの関心事項や興味、疑問でいっぱいになりました。テーマは幅広い中から選ぶことになりそうです。

 

 

 

 

 

 

 

最後にグループごとに、話した内容を簡単にまとめて発表しました。生徒たちは、住みたい街がどのような街かという発想のもとに、安心して歩くことができる、散歩したくなる、公共交通機関の利便性の良さ、誰にも配慮したバリアフリーである、楽しめるイベントがある、地元の良さを感じるマルシェなど定期的に住民が集える場所がある、などをキーワードとして挙げていました。「誰にも」ということも多くの点で共通の重要なワードであったようです。

【専門書の精読】

テーマに関係する専門的な本を読み、その内容をまとめて、発表することに取り組みます。それぞれが読んだ本の内容を共有することで、多くの情報を得ることになります。ただまとめたり発表したりするのではなく、相手に伝わりやすい工夫を凝らし、資料の作成では守るべきルールもあります。

そこで、まずは教員の発表を実際に聞くことで学びます。

●帖佐教諭のまとめと発表を参考にする

帖佐教諭が選んだ本

『フランスの地方都市にはなぜシャッター通りがないのか』

ヴァンソン藤井由実、宇都宮浄人(学芸出版社、2016)

 


要約より

フランスの地方都市は、中心市街地がにぎわっている。老若男女が思い思いに街歩きを楽しみ、広場に面したカフェで憩う。これは、フランスがシャッター街になる前にまちづくりの考え方を変え、それを実践し、「豊かな生活」を実現しようとしたことによる。本書では、人口10万人以上、100万人未満の地方中核都市に焦点を当て、まちづくりのダイナミズムを支える軸として交通を位置づけ、その上で、商業政策、土地利用など都市政策全般までが論じられている。交通に関しては、自動車ではなく、LRTを軸に交通まちづくり戦略が紹介されている。フランスと日本の比較も行うことで、日本の地方都市再生へのヒントとなる内容となっている。



内容より

1 歩いて暮らせるまちを実現する交通政策と、賑わう都市の「まちなか」ができるまで

2 中心市街地商業が郊外大型店と共存する仕組み

3 都市政策としてのコンパクトシティ政策

4 社会で合意したことを実現する政治

5 フランスから何を学ぶか


●本から新しく知ったこと、考えをまとめる

生徒たちは、内容について説明を聞いた後、以下の点についてまとめました。

・この本から新しく知ったこと

・この本から知ったことをもとにしてあなたが考えたこと

・この本から知ったことをもとに、生まれた疑問や知りたいと思ったこと

●専門書を読んでまとめる上で気を付けることについて考える

帖佐教諭のまとめでは、生徒たちにとってもともと関心の高いトピックを扱っていることもあり、大変興味深く話を聞きました。日本の田舎が、都会の単なる劣化版となってさびれ、人口減少が進んでいることと比較すると、フランスの地方都市はその都市らしさと住民が自分たちらしさを大切にする文化を守り、そのことが住民のさらなる街への愛着にもつながっているという対比が印象的でした。まとめ方では、要約や各章について、簡潔にわかりやすく、また後に振り返ってみてもすぐ理解できることも大切であることを学びました。

●山田教諭のまとめと発表を参考にする

山田教諭が選んだ本

『WALKABLE CITY: How Downtown Can Save America, One Step at a Time』

Jeff Speck (North Point Press, 2013)

 


From the summary

  • What are the main arguments?

― Sustainable Cities will make us Wealthy, Healthy, and Sustainable

・What is the point of this book or article?

― Urban life

― Street Life

― Cars are very bad

・What topics are covered?

― Why people should be interested in Sustainability?

― The Ten Steps of Walkability


From the Table of Contents

□Why Walkability?

□Walking, the Urban Advantage

□Why Johnny Can’t Walk

□The Wrong Green

□Then Ten Steps of Walkability

  1. Put cars in their place
  2. Mix the uses
  3. Get the parking right
  4. Let transit work
  5. Protect the pedestrian
  6. Welcome bikes
  7. Shape the spaces
  8. Plant trees
  9. Make friendly and unique faces
  10. Pick your winners

●実際に知ってアップデートする

山田教諭は、まずこの筆者について丁寧に説明し、この筆者の研究と考察が信用できるものであることを解説しました。そして、なんとなくイメージできるWalkable Cityについて、実際はどんなものか、新しい情報をアップデートしていく必要性を学びました。

●専門書を読んでまとめる上で気を付けることについて考える

山田教諭のまとめから、本の情報をきちんと整理し、論理的に筋道を組み立てて発表することを学びました。歩く=不便ではなく、かえって車を使わず歩くこと、公共交通機関を利用して生活する(できるようにする)ことは、環境対策においても、何より私たちの生活の質の向上において利点があるということにおいて説得力がありました。

また、シアトルやポートランド等の多くの問題解決のための先進事例を知ることもできました。最後には、必ず自分なりの考察を入れることも重要です。