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SSD(高校3年生)【後半】卒業論文/リサーチブック制作

  • 2023.02.03
  • 授業

2学期はいよいよリサーチブックにまとめる卒業論文の作成に取り掛かります。1年生で学んだSDGsの基礎知識や住みたいまちについてのリサーチ、SSRで取り組んだリサーチスキルの学びやまちづくりに関する課題図書の精読、実際にフィールドワークへも出て京田辺市の課題に対する探求にも取り組みました。京田辺市のまちづくりの担当課の方にお越しいただいてお話を伺ったり、全国大学まちづくりフォーラムに毎年参加されている真山ゼミの皆さんにZoomでお話を伺い「まちづくりとは何か」を学ばせていただきました。コロナ禍で方向修正も余儀なくされましたが、これまでの学びの集大成として、3年生ではそれぞれが卒業論文を完成させて集大成となる1つのリサーチブックとしてまとめます。

自分たちのテーマを決め、さらに関連図書の精読と内容を共有しながら理解を深めます。

 

●卒業論文の計画

卒業論文は約15000~20000字(原稿用紙40~50枚)。作成要領を作り計画的に進めます。


卒業論文とは

自由または指定されたテーマについて参考文献を調査しまとめただけのレポートとは異なり、自分で新しい問題を設定し、その問題の解決策をさまざまな根拠を示しながら、結論へと導いたものであり、何らかの独創性(オリジナリティー)が求められる。


●卒業論文作成の準備

1 トピックの設定(案を3つほど提出 9月)

一番大切なことは「自分で考え、自分で決めること」。そのために「疑問を持つ」ことがとても重要である。授業の内容について深く考えたこと、自分で読んだ本、普段の生活の中で生じた素朴な疑問、こういったことから発展させて考えるのが良い方法といえる。

2 先行研究の調査(参考文献、論文を調べたリストの作成 9-10月)

自分のテーマに関する論文(先行研究)を集めることが重要。そのために自分が読んだ論文の参考文献表をたどって集める、図書館で自分のトピックに関係の深い書籍や雑誌を探すなどが大切である。

3 先行研究を精読(計画的に参考文献から得た情報でノートを作成 10月)

先行研究を読み込んで内容を理解することで、今までにどのようなことが明らかになっていて何が未解決なのかを把握することが重要である。

4 データを集める(自分のトピックに関係するデータを抜き出す 11月)

必要な場合はアンケート調査もあるが、統計の取り方や性質には注意する。先行研究と異なる主張をする場合は、それを裏付けるデータの収集が必要である。新聞、雑誌、文学作品などを調査するなど、データベースやWebなどを用いてデータを抜き出す。

●卒業論文の書き方

1 読者にわかりやすいこと

丁寧に書くこと。自分自身の言葉で語り、人の

言葉を借りる際には必ず出典を明らかにする。

他者の見解、一般的な知識、を明確に区別する

こと。

2 論理的に語り、トピックを明白にすること。

論点を明らかにし、具体的なデータに基づいて 理論的に議論を進め、問題設定の部分と結論部分を明確にしながら読者を説得できるように書くことが重要である。

3 卒業論文の構成

いくつかの章に分けて論文の構成を明快にする。さらに各章を小さな節に分け、各節にも内容を示す小見出しを付けると良い。

4 書式の統一

定められたフォーマットを守ること。誤字脱字がないか、用事用語が統一されているか、参考文献や引用文献において書式が首尾一貫しているか、合致することが重要である。

 

いずれにおいても、その時点で方向修正ができるので、教員のアドバイスをまめに受けることは大事です。生徒は早速シートにそれぞれのテーマの候補、産雇文献などを記入しながら、計画を練っていきました。トピックについては、例えば「まちづくり」では幅が広すぎ大きすぎます。これまでの学びや課題図書などから、より深めたいこと、興味を持ったこと、素朴な疑問などを参考に、組み合わせるなどより具体的に、そしてできればオリジナルを意識しましょう。

 

●テーマについてdiscussion

卒業論文をまとめるリサーチブックの作成にあたり、大きなテーマを決める話し合いをしました。それぞれの興味のある範囲は異なりますが、それをまとめるテーマとなります。ここで大切なことは、それぞれがもれなく意見を出し合い、話し合うことです。生徒たちは小さなグループからあっという間に大きな輪になり、活発に話し合いを進めていました。前方に映り出された共有のオンラインページにはどんどんテーマの候補、そして章の分類が書き加えられていきました。教員のExpress! Share! という合言葉を自然に実践できていました。

 

 

 


テーマ(今日の途中過程)

  • (1)Transportation in Kyoto City京都市の交通と公共の場の向上を目的とした海外の慣習の導入
  • (2)京都市の交通を利用して充実した空間の生きやすさを改善
  • (3)Implementing different ideas of a sustainable city (Smart city, green city, compact city etc.) into every city to create a unique cities.
  • (4)交通政策による市街地活性化(Venice)と住民の幸福度比較Happy city
  • (5)世界の交通政策とモビリティマネジメント教育
  • (6)京都市をWalkable cityにするには
  • (7)世界の都市政策が高校生の日常生活に与える影響
  • (8)都心と郊外をつなげる政策のメリット
  • (9)公共空間の充実のシビックプライドの関係性
  • (10)日本を個性のあるまちにするためには(イタリアのslow cityを参考に)
  • (11)Implementing The new urban agenda in京田辺

(12)UN-Habitat promotes urbanization as a positive transformative force for people and communities reducing inequality discrimination and poverty.

(13)まちづくり、街を安全にすること、街に住みたくなる、そうするとコミュニティができ平和になる

  • (14)Territorial development
  • (15)stimulate sustainable, inclusive economic growth in these lagging Lands and urban spaces.

(16)City resilience program in cities impacted by natural disasters

Catalyze a shift toward longer term, more comprehensive multidisciplinary packages of technical and financial services, building the pipeline for viable projects at the city level that in turn, build resilience.

●卒業論文の取り組み

テーマ、具体的な章、トピックを決めるための話し合いが続きます。方向性が決まれば、それぞれが担当する部分、役割分担のうえ、ここからはしばらく各自の作業となりました。

●全国高校生フォーラム参加に向けて

冬休み中の12月18日(日)、文部科学省が実施する「2022年度全国高校生フォーラム」がオンラインで開催されることになっています。本校からはこのSSD受講生4名が代表として参加します。このフォーラムはWWL及びSGHネットワークに参加する高校生がオンラインにより一堂に会し、日頃取り組んでいるグローバルな社会課題の解決方法や提案等の英語でのプレゼンテーション映像発信と、生徒交流会が行われる予定です。

同志社国際チームの発表の内容は、SSD講座で取り組んでいる持続可能なまちづくりをテーマに、欧州や京田辺市についてのリサーチブックを作成しているなかで、「歩くまち」にフォーカスし提案するという形です。プレゼンテーションのデータやスクリプトは講座のメンバー全員で準備しようということに。全て英語での発表や当日のディスカッションではありましたが、いろいろな立場の人が参加しようという思いがあり、英語がネイティブではない生徒がチャレンジすることとなり拍手がわきました。卒業論文を仕上げている生徒たちにとっても、改めて自分たちのリサーチした内容や他校の発表を聞くことは良い刺激になりそうです。

●卒業論文の取り組みにあたって教員からのアドバイス

生徒たちはテーマ、そしてやることについて確認し合いながら自分たちで決めています。誰の意見も漏らさず聞こうとする姿勢がいつもあることは本当に素晴らしく、それぞれのやりたいこと、集大成となるものを皆でまとめていこうとしています。

教員からも当初よりこの講座は自主性を重んじているという話がありました。教員はサポートです。実際にいくつもの論文を書いてきた山田教諭、帖佐教諭からも以下のアドバイスがありました。


とにかく記録しよう

読んだ本、リンク、記事、話し合いの内容、とにかくまとめてわかりやすく全てを記録し、必要な時に必要な情報を呼び出すということがとても大事

最初の疑問の投げかけと最後の提案が明確でリンクしていることも大事


●2学期末の課題(日本語でも英語でも可)


1 Reflection

卒業論文をまとめてリサーチブックを作成するというGrad projectについて、まとまってきました。このプロジェクトをまとめるにあたって、あなたはどのような貢献、役割をしましたか。振り返ってできるだけ詳しく書いてください。

2 Research Planning

Grad Projectについて、各自の分担も決まってきたと思います。あなたは今後、どの様に自分の担当するリサーチを進めますか。なぜそれが必要かなどもできるだけ詳しく書いてください。


この課題に取り組むことで、自分の役割と今後のスケジューリングなど改めて確認します。3学期にはいよいよ各自のファイルを持って集まってもらいます。1冊の本にします!



提出課題Reflectionより一部抜粋

「自分と同じグループの人でなくても広く内容の相談を受けたり意見交換をしたりした。」「卒業論文を書くのは自分にとっても周囲の人にとっても初めての経験なので、質問されたり意見を求められたりしたら一緒に解決策等を考えた。それによって、自分が書きたいと思う内容がはっきりしてきたので自分自身への利点もあった。」

“I decided to write about how smart cities could affect these points in our society.”

「リーダーシップがないのであまりみんなをまとめることなどできなかったけれど、みんなの意見をちゃんと聞き、どうやったらもっといいアイディアになるかなど話し合いました。」

「みんなからの意見も聞き、自分の担当のテーマにも活かせました。3学期は全く違うテーマの人とも意見を交換し、お互いの改善点などを出し合い、クラスみんなで卒論を完成させたいです。」「積極的に周りの意見を聞き自分の持っている力を発揮してどのようなトピックなら全員の調べたい内容や話題を含めれるかを導くのに貢献した。」「メンバー一人一人に声をかけ、トピックの内容を全員でシェアしながら、実際本を読むとき読みやすいように順番をある程度確定させた。アウトラインをあらかじめはっきりと決めておくことで、自然な流れの文章を書いていくことができると考えたからだ。」「言葉の定義に微妙に認識の違いがあったため、理解してもらうのは時間がかかった。しかし建物の美術的なデザインではなく、行政との関りをメインに学ぶ機会はあまりないと思うから、自分もみんなもいい機会になったと感じる。」

“I was able to use my skill to cooperate and gather information and ideas from other people and come up with a decision as a class. I think I am good at helping my classmates with expressing their ideas, and I wish to always support the team.”

「みんなでメインのテーマを決めるときにはその意見に納得していない人がいないかどうか考え、一人だけの意見ではなく、みんなの意見がしっかり反映されるように考えて意見を出した。」

“I have worked on trying to help group people into functionable sections.”

「タイトルを決める際にみんなの読んできた本の内容もしっかり入るようにしたかったので話し合いをしているときに一つの内容に集中した提案があったのでそこで他のことも書けるような内容にできるよう提案を発言しました。」「具体的な数値をだしたり、難しい単語は説明をいれわかりやすく伝えたりなどの工夫をしました。」「提案について疑問がある際はチームメイトに聞いたり、それについて調べたりして、内容に厚みをもたせるようにしていた。ミクスドユースについての論文や記事を読むなどの事前準備もして、意見をいえるようにもした。」「次回からは人任せにせず、自分から積極的に提案を出していきたい。」「皆やりたいトピックが様々で、そのトピックをひとつにまとめられる主題を考えることはとても難しかったですが、なるべく皆が望むことが書けるように私も色々アイデアを出しました。」「交通や空間デザインのトピックを選ぶ人が多かったですが、それに商店街のついてのトピックを合わせられるような包括的で関連性のあるテーマになるように考えました。」



この内容からも、生徒たちが工夫して相手に伝え、皆の意見を聞き、誰の希望も漏らさないように取り込み、自分の役割をきちんと認識してグループワークにも取り組んでいたことがわかりました。

卒業論文は、冬休み中もそれぞれが作業の過程をGoogle Classroomにて共有しているため、他の人の内容も参照しながら進めます。最終的に一冊にまとめるために、統一感を持たせることも大事な要素です。教員もチェックし、気になることは都度アドバイスできるような体制になっています。

アドバイスの例:データや引用の書き方、また何が根拠になっているかは明確に。

卒業論文の完成、そしてリサーチブックに仕上がるのが楽しみです。

●最後のクラス

いよいよ、3年間の学びの講座も最後となりました。やってきたことを形にする取り組み、卒業論文を完成させようとしている生徒たち。十分な話し合い、そしてやるべきことを積み上げてきて多くの成長が見られます。最後のクラスでは、前のスクリーンにそれぞれの原稿を映し出しながら修正箇所を最終確認しました。高校を卒業して、それぞれの進路先へ進む生徒たちですが、この講座では苦労も多かったなか最後までやりきったという達成感と次への大きなステップになったという実感を持っているようでした。SSDを担当した山田教諭と帖佐教諭も、いいクラスだったと振り返りました。個性豊かなメンバーでもあり、進路で大変な時、行き詰ってHELPが必要な時、教員に、仲間に声を掛け合えあえる素敵なメンバーでした。

あと少し、リサーチブックとして冊子にまとまるまで卒業論文の最後の仕上げが残りますが、卒業式には配布できる予定です。これからもこの経験を活かしてそれぞれの場所で活躍してくれることを願い、応援しています!