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SSD(高校3年生)特別講義「サステナブルなまちづくり」地球環境学博士 松本文子先生

  • 2023.01.20
  • 講演会

3学期が始まり、卒業論文の取り組みも大詰めとなるなか、特別講義を聞く機会を得ました。講師は、大阪大学COデザインセンターにて建築・都市計画論について教鞭を取られ、同時に国立民族学博物館の研究員でもいらっしゃる松本文子先生です。先生は、この講座においても大変ご縁があり、講座で参照していた『ポートランド地図帖-地域の「らしさ」の描き方』の翻訳者のおひとりでもあり、帖佐教諭の高校時代の同級生でもあります。「サステナブルなまちづくり-ポートランドと京都市から学べること」と題してお話を伺いグループワークもさせていただきました。

先生のお話のキーワードより

【コーデザイン】

コーデザインとは一緒にデザインすること、1980年代には、デザインする人と使う人が分かれていましたが、2014年ころから、with people by peopleというように上下関係ではなく一緒にという変化がありました。皆さんの意見もぜひ行政に提案していくべき!

【まちの光と闇】

最近のキーワードのひとつにダークツーリズムという言葉があります。まちづくりにおいても、一番明るい部分と暗い部分を押さえて、真ん中を埋めていくという手法です。ここでのダークサイドはテレビでも取り上げられたアフガニスタン、そして先生が訪問されて目の当たりにされたドバイの状況を説明してくださいました。一見成功しているようにみえても必ずダークサイド(負の面)があるということです。よいところだけを見ない!

【ポートランド】

おしゃれな街としてイメージのあるポートランドはIT関係者が多く集まる街でもあり、そのコンセプトも ”make Portland weird!” というように、落書きもアートとして認定、ロハスといって地球環境保護と健康を重視する生活の仕方を求める人たちが集うなど個性的で象徴的ともなている特徴があります。このポートランド地図帖は、地図で都市文化を描く新しい手法の本で、ポートランドのあらゆる面を切り取り、掘り下げて地図で解説した、実は学術的な本です。難しい学術書ではなく、わかりやすく人に伝える、どうやったら興味を持ってもらえるか、デザイナーも加わり、どのページから見ても楽しい本になっています。自分の研究も見てもらわないと意味がない!幅広く広めないと意味がない!

【橋の下】

この書籍の中で、松本先生が担当された翻訳の部分は「橋の下」についてでした。まちには必ず橋があり、そこはれっきとした公共空間でもあります。それなのに橋の下は暗くホームレスが住むような閉鎖的な環境になりがちです。そこでさまざまな橋を取り上げ、そこをイメージアップさせるようなポートランドの取り組みを紹介しています。

京都もどこかのある部分を切り取って拾い上げてもいい!答えを外に求めずに自分がどこに興味を持っているか捉えなおすといい!京都は環境団体もロハス層も多いので環境地図も作ることができる!

【京都市について】

京都市のダークサイドを知っていますか?東九条には労働者として過去に朝鮮半島から集められた人たちの住むコリアンタウンがあり、歴史的に長期間手厚い補償もないままでした。京都市の発展の陰にも、そういった都市特有のスラムの存在、差別の実態があります。ぜひ「柳原銀行記念資料館」を訪れてもっと知って欲しいと思います。被差別部落の人たち自らが作った唯一の銀行が資料館になり保存されています。

京都のイメージといえば、動画を紹介してくださいました。そこからも、歴史、伝統の技、静か、奥ゆかしい、気品がある、そういったイメージを持ちます。どういうコンセプトで撮るか、撮ってからイメージを固めていくか、どちらにしても動画を作るということは大きなパワーツールになります。想像力とクリエイティブさで!

【Miroを使ったDesign thinking】

松本先生がご用意くださったデザイン思考的ワークショップにも取り組みました。Miroではオンライン上のホワイトボードで、ボード全体を保存して管理、必要な部分だけを画像やPDFに変換して別の場所に保存することも可能です。簡単に書き込みや付箋を貼ったりはがしたりでき、それを共有することができます。今日のお話を念頭に、京都市に対する取り組みの提案について3つのグループに分かれて話し合い、それぞれ1つの提案としてまとめます。それを共有し、皆の意見を聞きます。


①サブスク

レンタル自転車、地下鉄、バスなど事業者と連携してサブスク化。車中心から歩きや自転車、公共交通機関中心の生活に。


②障がい者のすごしやすさ

障がい者にもより便利に、今ある地下鉄からの地下道をどうブランディングするか。


③公園をもっと運動のできる場所に

歩ける森を。まちと自然のつながりを作る。何より住民にとってよい街へ。


このワークショップでは、それぞれの提案をしてから、それについて多くの意見がどんどんMiro上に出て、そこからそれぞれの提案がどんどん良い方向に膨らんでいきました。こういった手法でのディスカッションをしてみると、とても学びが多く、今日だけでもたくさんのヒントがあり、今後に大変期待の持てる提案の話し合いをすることができました。

 

松本文子先生には、最後に研究員として勤務されている国立民族学博物館の「みんパック」という面白い取り組みをご紹介いただきました。これは世界の違った文化圏をより深く学ぶために、思考を凝らしたその地域の文化的なものや日常に使われている実際のものが1つのトランクに詰められていて、これを誰もが送料のみで借りることができるということです。この日は「イスラム教とアラブ世界のくらし」をお持ちいただき実際に皆で体験させていただきました。とても楽しそうな様子で、そこに行ったことのある生徒もない生徒もいる中で、実物に触れて体感することで一気に違った文化を近くに感じることができました。

生徒たちが事前にお送りした質問にも丁寧に答えてくださり、大変参考になりました。先生がこの道を志すきっかけが少女のころジブリのナウシカを観て自然を守りたいと感じたこと現在の取り組みにも一貫してつながっているというお話も印象的でした。松本先生、大変お忙しい中このような機会をつくってくださり本当にありがとうございました。