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SSR(高校2年生)まちづくりに関して書かれた専門的な本を読んでみましょう

  • 2022.05.31
  • 授業

まちづくりに関して書かれた専門書『地域・都市の社会学』を精読し、その内容を

章ごとに輪番制で生徒たちが報告していきます。生徒は担当箇所についてまとめ、プレゼンテーションすることで内容を共有し、自分たちの提示するディスカッショントピックについて意見を出し合います。一冊の本の内容を共有し、質疑応答でわからない点などを質問し、皆で考えたり、意見を述べ合うことでさらに理解を深めていく取り組みです。

皆で読み、ディスカッションすることは、自分だけの理解で終わらず、抜け落ちた部分も拾うことができるといったメリットに加えて、新しい気付き、より詳細な理解を得られるという点でも効果的です。

 

●課題図書にについて

『地域・都市の社会学 — 実感から問いを深める理論と方法』(2022年4月有斐閣)

平井 太郎,松尾 浩一郎,山口 恵子/著

「半径1キロから社会学しよう」というキャッチフレーズにあるように、身近な地域の生活に触れ、都市の問題を知ることから、社会学の世界へ入っていくことを提案しています。テーマは、身近な地域の生活から都市の問題、都市問題や地域住民の課題、人と人との距離、排除や貧困など、具体的な社会問題など

【目次】

第Ⅰ部 地域を実感する

第1章 地域と都市はどのように実感されるか──「距離」への敏感さ

第2章 地域・都市はどのように形づくられたか──人びとの空間的共存を捉える視点

第3章 空間と場所の問い方──マクロ・ミクロからのアプローチ

第Ⅱ部 地域に集まる力/世界に広がる力

第4章 グローバル化とどのように向き合うのか─再生産領域への労働移動から考える

第5章 ナショナルなものと地域・都市──〈中心〉と〈周辺〉,その先にあるもの

第6章 ローカル・トラックとは何か──進学・就職をめぐる理想と現実

第Ⅲ部 地域・都市で生まれる社会

第7章 都市の公共空間──人の集まる場所のしくみ

第8章 都市の不平等はどのように進行しているのか──異質性と排除が結びつくとき

第9章 コミュニティはどこから来てどこへ行くのか──語りのダイナミズム

第Ⅳ部 地域・都市のこれから

第10章 「限界集落」の「限界」はどう乗り越えられるか──ここに生きる意味の承認

第11章 地域・都市はどこへ行くべきか──地域への問いと社会学的想像力

第12章 創造と継承──都市の未来,都市の歴史

 

●適切な発表のために

1ハンドアウトを用意 ・工夫しつつ内容のあるものに

・キーワードだけでも文章ばかりでもNG、後で見て振り返りやすいもの

2引用の際の注意   ・自分の言葉でまとめるのはNG、内容をそのまま「 」(p. )といった形で抜き出す

・他の書籍からの引用は著者『タイトル』(出版社、発行年)、p. と適切な形でしましょう

 

●まとめの例

教員2人ともがそれぞれ第1章と第8章を読み、一例としてまとめました。その発表を

聞き、自分たちの取り組みの参考に役立てましょう。帖佐教諭による第1章です。


第1章        地域・都市はどう実感されるかー「距離」への敏感さ

1 地域と都市の実感

「距離」とは何か?

・「通勤・通学の際、ごく近い『距離』にある乗り合わせた人びとと、言葉を交わしたり耳を傾けたりすることはあまりない。孤独感/閉塞感を現代都市固有の感覚とした」(p.5。)

・「人びとが(中略)閉じ込められた感覚を覚えながら、どんなふうにコミュニケーションをしているのかに目を向けようとしていた。まさに『コンタクトゾーン』であり『空間的共存の作法』の模索といえる」(同上。)

・「互いの『距離』に関する暗黙の約束事は、明確に指示・掲示されているわけでもないのに、おのずと生まれ共有される。(中略)それもまた『鉄道に乗る』そして『都市を生きる』経験だといえる。」(p.6.)

2 地域と都市の実感「書く」

・「『地域と都市』を当たり前のものとせず、みずからの目や耳でもう一度実感し組み立てなおす作業」「近さと遠さの組み合わせが、『地域や都市』を実感するのに欠かせない。」(p.11。)                            つづく


ここでは、内容の要約をわかりやすく書き出し、シンプルにまとめています。第1章では、社会学とは何か、社会の問題と個人の問題を分け、実際に起こっている出来事やそれに関わる様々な要素をわかりやすく解説し、学問によって考察・検証・解決へという順序でまとめられています。自分の住んでいるまち、または住んでみたいまちを自分なりの方法で描写してみると新しい見方ができるかもしれません。まとめ方はそれぞれですが、誰が後から読んでも内容を把握できるものであることが大切です。

次は、城村教諭によってまた別の方法でまとめられた第8章の発表です。

スライドを用意し、画像や表を交えて、そして関連する書籍を紹介しながらの発表でした。この章では、都市の特徴を、異質性、魅力、交差性などの観点から分析し、近年の都市の不平等についてまとめられています。レジリエンスがまちの不平等と大きく関わっていることから、いかにして異質な他者とのつながりに頑健さ装備するか、富が商品として現れないまちなど、普段は目に見えない部分に目を向けて問題の解決策を考案しています。課題や、課題に対する処方箋として参考に関連図書を発表者の視点から紹介し、聞き手がより興味、関心を持つことができる、オリジナリティ、工夫がありました。

次回は、この「都市の不平等」について、ディスカッショントピックをいくつか設定してクラスで意見を出し合い、話し合います。