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SSS(高校1年生) issue+designとEdoの講演・「SDGs de 地方創生」ワークショップ

  • 2021.06.19
  • 講演会

今日は、この講座では2回目となる外部の講師の先生をお招きしてお話を伺う貴重な機会です。前回講演をしていただいた武田先生は研究者としてのお立場でした。今回のお2人はまた違った角度から、実際に社会活動の中でSDGsを使って社会をどう見ていくか、持続可能な社会の課題とどう向き合っていらっしゃるか、多くのヒントをいただきました。

講師の先生のご紹介


小菅 隆太 氏

特定非営利活動法人 イシュープラスデザイン理事

経済産業省「次世代空モビリティ政策室」CM

2010年広報PRコンサルタントとして独立。ビジネスセクター、ソーシャルセクター、パブリックセクターのトライセクターで活動するプロジェクトマネージャー。「社会の課題に、市民の創造力を。」issue+designには、代表著『地域を変えるデザイン(2011)』執筆協力から参画(現在理事)。NPOのメンバーとしての活動のほか、経済産業省「次世代空モビリティ政策室」コミュニティマネージャー/台湾ロマンチック街道台三線顧問/シーライン東京PR顧問/株式会社soeasy広報PR顧問/群馬県嬬恋村観光大使/日本愛妻家協会事務局長代理を歴任。「SDGs de 地方創生GOOD DESIGN AWARD 2019 BEST 100受賞」ディレクター。

 

盤所 杏子 氏

株式会社 Edo 副代表

ひだ木ふと 代表

リクルートジョブズで人材採用領域に携わった後、2015年結婚を機に岐阜県飛騨市に移住。地元高校の地域連携コーディネーターとして課題活動支援などに取り組んだ後、2019年教育支援会社Edoを代表と2名で創業、主に地方部の教育魅力化プロジェクト、文科省事業コミュニティスクール推進、SDGsを始めとしたワークショップを活用した学び作りなどに取り組む。2017年からは飛騨市の70%を占める広葉樹活用のコンソーシアムメンバーとして、地元木工職人とともに小径木を活かした商品(ひだ木ふと)開発を個人事業主として手掛けている。国家資格キャリアコンサルタント/中学校・高等学校教員免許/SDGs de 未来構想ファシリテーター/ 飛騨市学園構想サポートマネージャー


●SDGsは自分と社会の繋がり - 盤所 杏子

「私は群馬県飛騨市から来ました。群馬県飛騨市をご存知ですか?」

「アニメ、『君の名は』の三葉の暮らす場所といえばきっと知っている人もいますね!」

盤所さんは飛騨市でSDGsにも関わる教育支援や地方再生にお仕事を通じて携わっておられますが、はじめからSDGsが念頭にあったというわけではなく、その地域に住みその地域の役に立ちたいと始めた様々なことが、後でSDGsと深く関わっていることに気づいたとおっしゃいます。ご紹介してくださったのが、SDGsイシューマップです。今まで目にしてきたSDGsを表現するデザインとは違い、円の中に55のあらゆるイシュー(課題)が示され、SDGsの「17のゴール」を1-17の数字順ではなく「人間性」「経済」「心身」「環境」の4パートで再配置し、17のゴールが、すべてつながっていて、1つのゴールを達成するためには、他の目標とのつながりを考えなければならないことを理解するためにデザインされました。SDGsが持つ全体性や、連鎖を表現しています。「SDGs de 地方創生」ゲームのために作られたオリジナルマップでもあります。この表にご自身の取り組みを当てはめ、どの課題が自分と関係していて、興味があるのか、改めてそれぞれが単独で存在しているものではなく、深く繋がっていることにも気づかされ、日々の母親業に至るまであらゆる取り組みに意義を感じることができたそうです。活き活きと素敵に活動されている盤所さんがそういったことからもやりがいを感じられていることがとてもよくわかりました。「創造力」と「想像力」、この学びや知識は何かにきっと役立つ、一緒に行動する仲間を見つけよう、日頃からそのような意識を持ってワクワク過ごしてとエールを送ってくださいました。

 

●SDGsの課題に包括的なアプローチで向き合う - 小菅 隆太

「私はNPOや経産省など、いろいろなところに所属し、それを活かして社会非営利団体、公共団体、民間企業などの組織を繋ぎいろいろな役割を果たすトライセクターリーダーと呼ばれる働き方をしています。」

小菅さんは、その肩書きからもわかるように多彩な顔を持ち、幅広くご活躍されています。今日は、盤所さんやご自身の働き方が、将来の働き方を選択する際の参考になればとお話を始めてくださいました。また数々の取り組みの中から、issue+designが日本各地で行ってきた地域や社会の未来のための住民参加型のプロジェクトの一部をご紹介してくださいました。ここではデザインとは、美と共感で多くの人の心に訴え、創造を喚起し、社会に幸せなムーブメントをおこす行為全般を表しています。

  • 神戸「できますゼッケン」:復興ボランティアのスキルを可視化
  • 初台「Frog by TOYOTA」:人がつながり街を発見する5km/hの新型モビリティの開発
  • 高知県佐川「さかわ発明ラボ」:地域資源とデジタルファブリケーションの力で地域・生活を豊かに
  • 「みん転会議」:みんながノリノリになれる交通安全社会を築くための未来を語り合う
  • 「プレ転シングルマザー手帳」:孤独に悩むすべてのプレ・シングルマザーの手助けに
  • 「認知症未来共創ハブ」:認知症とともによりよく生きる社会の実現に向けたパートナー市民の募集

社会の課題に市民のdesign(想像力)をというテーマの元、どの取り組みも社会の課題に市民の想像力が活かされ、対話と協働で成り立ち、小菅さん達の活動はそれらを繋げています。持続可能な地域とは、人と経済の豊かな生態系でできている、そのために地域に蔓延する分断の関係を再生するために全てが繋がっています。その事を分かりやすく示すために円形のSDGsイシューマップを活用されています。世界は繋がっていて、分断を乗り越え、対話と協働で包括的に課題に取り組むという根本的な姿勢を示してくださいました。課題があるということは解決策があるというポジティブな視点に立ち、クリエイティブな魅力溢れるパワフルな小菅さんが印象的でした。

 

●ワークショップ「SDGs de 地方創生」を体験!

お2人には、講演の後も引き続きお時間をいただき、事前に募集をした24名の生徒たちを対象に、また数名の教員も加わり、ワークショップを開催していただきました。お2人はこのワークショップを主催・開催するファシリテーターとしてもご活動されています。今日は、その特別なワークショップを体験させていただけることも大変貴重な経験となりました。

「SDGs de 地方創生」は、issue+designが開発に携わり、カードゲームを通じてまちの未来を創造的に考え、参加者全員で体感できるシミュレーションゲームです。

さて、ここはK31まちという架空のまちで、皆さんはそこの住人です。そうして説明が始まると、最初は戸惑いと緊張で硬い表情だった参加者の生徒たちですが、住民としての役割、割り当てられた予算、12年ごとの時間設定、「人口」「経済」「環境」「暮らし」といった状況メーター、プレーヤーと呼ばれる自分たちの行動次第でそのメーターが動きまちの様子が変化していくこと等の説明を受けると、どんどんゲームに引き込まれていく様子がわかりました。ゲームがスタートして、12年間が繰り返される度に、もう席に座っている生徒は一人もおらず、どこかで誰かが誰かと交渉し、K31まちをバランス良く豊にするという共通の目標のためにまとめようと大きな声で情報を共有するようになりました。こんなに一生懸命にまちのために交渉し、努力する仲間がいれば素敵なまちができそうです!

小菅さん、盤所さんが一番大切だという振り返りの時間では、改めてゲームを振り返り、気付きを皆でシェアしました。

【参加した生徒たちの感想】

  • まち全体を良くするには、必ずしもギブアンドテイクの関係ではなく、困った人がいれば、また皆の幸せにつながるなら、相手に譲る選択ができることが大事だと思いました。
  • 自分たちの行動がまちを変えるという実感を得られ、ゲームを進めるうちに自分たちのミッションの達成を重視するよりもまち全体の目標に目を向けられるようになった。
  • お金を確保することに必死だった時よりも、必要だと思う事業にお金を寄付するようになると地域が良くなることに気付き、助け合いの必要性を実感し学びになった。

個々の志を達成することよりも、まちを良くしたいという同じ目標があることを確認し合い、積極的な対話と協働の大切さに気付き、疲れも見せず爽快ともいえる表情を見せた生徒たちでした。SDGsを、まちづくりという身近なプロジェクトに照らし合わせながら、自らが取り組む一員だということを体感しながら、今後SDGsと向き合う時にも、1つの目標の達成にとらわれず、全体は連鎖しており、全体を一緒に引き上げるという包括的なアプローチを念頭に忘れずにいたいと思います。

本日は、長いお時間、そして貴重なお話と体験を、本当にありがとうございました。