SSS(高校1年生)まちづくりとは
- 2023.05.26
- 授業
第2回目の講座では、いよいよ私たちの探求のテーマである「まちづくり」について学んでいきます。まちづくりとは何かを考え、その中でもまちづくりを考えるにあたってさまざまな視点があることについて知ることはとても重要だと考えます。
● まちづくりとは何か?
・身近な居住環境を改善すること
・地域の魅力や活力を高める継続的な活動のこと
とはいえ、良いまちづくりの答えは1つではありません。交通や施設、防災計画などのハード面以外にも、人々の関わり、サービスなどのソフト面も必要な要素です。
そしてまちづくりには、よりよい場所であった方がよいという共通の意識のもと、さまざまな立場の人がかかわっています。
いろいろなまちづくりの観点
福祉、復興、防災、景観、子育て、ウォーカブル、自転車で動く、など
SDGsの目標#11「住み続けられるまちづくりを」のターゲット
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【11-1】 | 2030年までに、すべての人が、住むのに十分で安全な家に、安い値段で住むことができ、基本的なサービスが使えるようにし、都市の貧しい人びとが住む地域(スラム)の状況をよくする。 | |||||||
【11-2】 | 2030年までに、女性や子ども、障害のある人、お年寄りなど、弱い立場にある人びとが必要としていることを特によく考え、公共の交通手段を広げるなどして、すべての人が、安い値段で、安全に、持続可能な交通手段を使えるようにする。 | |||||||
【11-3】 | 2030年までに、だれも取り残さない持続可能なまちづくりをすすめる。すべての 国で、だれもが参加できる形で持続可能なまちづくりを計画し実行できるような力を高める。 | |||||||
【11-4】 | 世界の文化遺産や自然遺産を保護し、保っていくための努力を強化する。 | |||||||
【11-5】 | 2030年までに、貧しい人びとや、特に弱い立場にある人びとを守ることを考えて、水害などの災害によって命を失う人や被害を受ける人の数を大きく減らす。世界の国内総生産(GDP)に対して災害が直接もたらす経済的な損害を大きく減らす。 | |||||||
【11-6】 | 2030年までに、大気の質やごみの処理などに特に注意をはらうなどして、都市に住む人(一人当たり)が環境に与える影響を減らす。 | |||||||
【11-7】 | 2030年までに、特に女性や子ども、お年寄りや障がいのある人などをふくめて、だれもが、安全で使いやすい緑地や公共の場所を使えるようにする。 |
まちづくりとは、街で豊かな生活をするうえで必要な取り組みを全て含んでいる言葉です。
● まちづくりについてそれぞれの視点から
SSS講座はチームティーチングで多教科の教員がそれぞれの得意分野からの視点でまちづくりを考えています。まちづくりに関してどのようなことに興味を持っているか、取り上げた書籍やイベントを通して1人1人話を聞いてみましょう。
「北アルプス国際芸術祭」吉田教諭
仕事を辞めたら住んでみたいなという場所の1つが長野県です。持続可能な地域づくりを目指し3年に1度開催される国際芸術祭では、北アルプスの大自然を背景にアート作品が展示され、感動しました。この地域の魅力を存分に楽しむことができ、来場者の半数を超える人が県外から。その結果、大きな地域への経済波及効果も及ぼしています。2024年に開催されますので、ぜひ訪ねてみてください。
『「助けて」といえる国へ 著:奥田知志、茂木健一郎』 朴元教諭
宗教に何かを求める世の中ではなくなっている現在、地域の人々とのつながりの大切さに気付かされます。この書籍では、NPO法人「北九州ホームレス支援機構」での活動を通して見つめなおす中、「強い人が弱い人を助ける」ではなく「弱い人同士が共に生きる」という視点に日々の場面でも考えるきっかけを沢山もらいました。他者に目を向けるというまちづくりをソフト面から考える一冊でもあります。
『フランスの地方都市にはなぜシャッター通りがないのか 著:ヴァンソン藤井由実』 帖佐教諭
私も訪れたフランスのストラスブールは地方都市ですが活気があり街並みも素敵です。この書籍では、トラムや街の建物が大きく関わり、「豊かな生活」の考え方が実践されていることに気付きます。まちづくりのダイナミズムの軸として交通を位置づけ、さまざまな政策について論じられていて参考になります。
『神山プロジェクト 未来の働き方を実験する 著:篠原 匡』吉田教諭
徳島の神山町は、電車も通らない山中の集落で人口は減り続け存続も危うい消滅都市でした。それが現在は9社のベンチャー企業のオフィスを持ち、移住希望者が増加し続けています。一般的にはPCで仕事をする時、さあ山に行こうとは思いませんよね。どのような仕掛けがあったのか興味深くぜひ一度行って欲しい場所です。
「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」北川教諭
京都市ではいろいろなことが企画されています。このイベントも、普段は立ち入れない建物や、何気ない商店街での意外性のある展示など、街を興味深く探索しながらアートもとても新鮮な気持ちで堪能できるおもしろい企画でした。気取らずアートに親しめ、また社会問題をテーマにした写真も多く、来場者は例年100万人を越える人気です。地元を巻き込んで人を呼ぶという1つの良い例だと思いました。
『シビックプライドー都市のコミュニケーションをデザインする 著:武田重昭 他』 坂下教諭
さまざまな都市の街の取り組みを紹介。アムステルダムでは、「I amsterdam」というキャッチコピーで、多様性のあるカナルシティでありその人々がアムステルダムをつくるという姿勢を示し、「街を誇りに思う」気持ち、すなわちシビックプライドを高揚させています。共著の1人である武田先生には、次回講演に来ていただきます。
6人の教員も「まちづくり」に対しての視点はさまざまです。そしてまちづくりは、さまざまな視点から取り組まれていることもわかりました。
● 大阪公立大学 准教授 武田重昭先生講演について
実際に第一線でまちづくりに関わる専門的な知見を持つ方を講師にお招きする予定です。
大阪公立大学 生命環境科学研究科 緑地環境科学分野
武田 重昭先生の研究内容について
住宅団地やニュータウン等の計画的に整備された集住環境におけるオープンスペースをはじめとする都市の緑地空間を対象として、その空間形態とそこでの生活行動や運営の仕組みとの関係性を分析し、保全・継承すべき緑地環境の特質を明らかにするとともに社会状況の変化に対応した活用の方法や生活者の新しい関わり方によるマネージメント手法について研究を行っています。 (大阪公立大学ホームページより)
人生と都市を魅力的にする「パブリックライフ」について研究しています。UR都市機構、兵庫県立人と自然の博物館を経て、現職。共著書に『シビックプライド』『いま、都市をつくる仕事』『都市を変える水辺アクション』ほか。共訳書に『パブリックライフ学入門』 (武田先生のTwitterアカウントより)
自分だけが心地よく魅力を感じているのではなく、街全体が魅力的、そこに住む皆が心地よく生活できること、それがパブリックライフです。武田先生のご研究の中にはまちづくりに関するこういったワクワクするKeywordが登場します。
オープンスペース:開かれた、誰でも使うことのできる空間
マネージメント手法:運営の方法
パブリックライフ:公共の生活、プライベートライフの対概念
シビックプライド:市民としての誇り
武田先生に講演にきていただき、ぜひ街や都市についての、新しい視点について、学んでもらいたいと考えています。武田先生が共著者でもある次に紹介する本を読んでみると「魅力的な都市はどのような都市か?」についての考察を読み取ることができます。
● 魅力的な都市とはどのような都市か
問い: 魅力的なまちはどのようなまち?住みやすいまちと違う?
『シビックプライド 都市のコミュニケーションをデザインする』(宣伝会議、2008年)
例えばヨーロッパは、小さな都市もそれぞれ特色があり、また趣があります。住民が関心を持って関わっていて、まちに愛着を持っています。この著書の中では、そのプロセスに注目し、都市の再生政策を進める上で市民の街づくりに関するコミュニケーションがとても重要なこと、そしてそれがあって初めてより多くの市民の共感のもとに計画が進み、人々の都市に対する愛着が生まれることについて解説されています。
● 講演をきくにあたって
最後に、貴重な講演をきくにあたって気を付けることについて話しました。講師の方は講演のために準備をされて来られます。せっかくの機会に、ここでしかできない質問、この先生にしか聞けない質問をしましょう。きちんと理解したうえでの質問、聞かれた側がどう受け取るかという想像力を働かせることが必要です。
● 本日の課題
武田先生の研究の中で、興味を持った内容または質問したい内容をグーグルフォームに記入してください。武田先生にも事前に共有しますので、先生の講演に組み込んでもらえるかもしれません。
先生の書籍、また紹介するリンクを参照してください。
https://sotonoba.place/sotonobaradio11 ソトノバラジオ
https://book.gakugei-pub.co.jp/campaign/covid-19_takeda/ コロナ関連特別寄稿
https://citylabtokyo.jp/2020/09/18/200920-eventreport-aiba-takeda/ City Lab Tokyo