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SSS(高校1年生)まちづくりの先進事例 その2~富山市、コペンハーゲン、フライブルグ~

  • 2023.12.04
  • 授業

これまでの講座で人口が少ない徳島県神山町と人口が多い東京都渋谷区のまちづくりの事例について話を聞きました。今日はまちづくりの先進事例の第二弾として、実際に先生方が視察訪問した人口規模では中核都市の富山市、デンマークのコペンハーゲン、そしてドイツのフライブルクのまちづくりについて話を聞きます。

 

● 北川教諭 ~富山市のまちづくり~

 

富山市・・・人口約42万人の中核都市。約10年前をピークに人口は減少している。

 

【コンパクトなまちづくり】

人口のドーナツ化現象が起き、人口減少によって郊外のインフラ等を維持、管理していくことが難しくなっていく。
→「公共交通機関を軸としたコンパクトなまちづくり」を推進し、2006年
LRT(次世代型路面電車システム)を日本で初めて導入した。

 

【“AMAZING TOYAMA”プロジェクト】

市民ひとりひとりが富山に愛着と誇りを抱く「シビック・プライド」を醸成するために考えられたキャッチフレーズ “AMAZING TOYAMA”。ポスターやパンフレット、車のナンバープレートのデザイン等に使用したり、市内各所にモニュメントを配置して住民のシビックプライドを高めている。
(写真は富山市ホームページより)

 

 

 

 

【森雅志前富山市長の取り組み】

富山市のまちづくりの仕掛け人は、2002年より約20年間市長をしていた森前富山市長。人口減少が続く中、郊外へ人口がこれ以上拡散することなく、中心に人が集まるように、車社会から公共交通機関を使った暮らしにシフトするなど、将来の市民のために今、やらなければならないことに取り組む。
その他にサイクル・シェアのシステムや、まちの中で花束を買って電車に乗ると無料になるなど、「私も住みたい」といってもらえるまちづくりに取り組んでいる。

 

● 帖佐教諭 ~デンマーク・コペンハーゲンのまちづくり~

 

コペンハーゲン・・・人口約80万人で、本土は九州と同程度の広さ。

 

 

 

【グリーンモビリティ】

 

自転車政策と公共交通機関の充実。

車道を狭くして、自転車の専用道路や高速道路をつくるなど、自転車中心の交通を整備している。メトロは24時間自動運転し、高齢者や障害者など自転車に乗れない人たちのための公共交通機関の充実を図っている。

 

 

 

 

「快適に安価で移動できることが全ての人の権利である」という考え方。また環境にもやさしく、市民の健康維持にも役立ち、経済効果にもつながっている。

 

【ヒュッゲ】

ヒュッゲとは、デンマーク語で「居心地のよい雰囲気や時間」や「小さいことに幸せを感じる」などの意味がある言葉で、デンマーク人はこの言葉を大切にしている。それが暮らしにもあらわれている。

 

【その他の取り組み】

・アブサロン教会-民間企業が使われていない教会を改装し、卓球を楽しんだり、知らない人同士が集まって一緒に食事ができたりする公共の空間。
・グスタグロ農園-都市型・屋上農園をつくり、そこでとれた野菜等を使ったレストランも経営。市民のボランティアも多数参加している。
・コペンヒル-多くの人が敬遠するごみ処理場の上にスキー場やカフェなどの娯楽施設を作る。コペンヒルからは、洋上風力発電が、市民の出資で行われている様子を見ることができる。

 

デンマークでは、すべての人が豊かに暮らし、平等を重視した政策や取り組みがなされている。住民のシビックプライドを高め、「不安も不満もない」と言えるまちづくりを実現している。

 

● 坂下教諭 ~ドイツ・フライブルクのまちづくり~

 

フライブルク・・・人口は23万人の小さいまち。フランスとの国境は近いところで約3キロ。堂安選手が所属するSCフライブルクのスタジアムがあり、学生が多い、アカデミックなまちでもある。

 

話を聞いた人:環境ジャーナリストでもあり翻訳家の今泉みねこさん(フライブルグ在住30年)

 

 

 

【交通対策】

・レギオカルテという地域環境定期券を導入。フライブルクと近郊の鉄道、トラム、バスが乗り放題になる定期券で、車に乗らなくても移動ができる生活を可能にしている。
・Park&Ride まちの中心部に車を乗り入れないために校外の駅などに無料の大型駐車場があり、そこから電車でまちの中心部に向かうしくみ。結果的にまちの中心部での歩行者が増え、商店が活性化する。
・自転車専用通路の整備。

 

【廃棄物政策】

ゴミの削減とリサイクルの推進を目的とした仕組みづくりができている:
・市からゴミ箱を有料で借りてゴミを捨てる。大きいゴミ箱よりも小さいゴミ箱を選ぶことでゴミの量を削減することができる。
・ペットボトルやビン、缶などはデポジット制を導入して、回収が促進されている。

 

【エネルギー対策】

・1970年代、酸性雨によって森が枯れ、原子力発電所建設の計画が持ち上がったことからその反対運動が起こり、環境保全や自然エネルギー推進の動きが活発化する。
・地域熱供給、コジェネレーションのシステム、マイスターランプの配布など
・フライブルクは総合的な環境首都と言われる。

 

 

フライブルクでは様々な工夫が組み合わされていて、意識せずに行動ができるようにシステムが作られている。がんばってやる、というよりは自然と行動ができるような仕組みが整っている。

 

これらのまちづくりの事例より、どのまちも公共交通機関を中心とした生活を基盤にして、人や環境にやさしい暮らしを無理なく可能にする政策や仕組みが整っていることがわかります。私たちがより豊かに暮らしていくために、どのような政策や仕組みがあればよいのか、これらの事例から考え学ぶことができました。

 


 

【課題】

2学期は京田辺市長より京田辺市のまちづくりについて直接お話を伺うことができました。また国内やヨーロッパなどでの持続可能なまちづくりの先進事例について学びました。これらを踏まえて3学期には京田辺市への政策提案を行います。

以下の7つのグループに分かれて最終的には生徒たちの考えた政策案を実際に京田辺市に提案することを目指します!

1. 少子高齢化に対する対策
2. 中心市街地の活性化
3. 交通政策
4. 公共施設やパブリックスペースの活用
5. 農業、観光業、その他産業の創出等
6. シビックプライドを高める政策
7. 多様な市民のつながりを育む政策