SSS(高校1年生)京田辺市への政策提案 ークラス代表発表
- 2024.03.07
- 授業
いよいよ1年生最後のSSS講座です。今日は大学の講義室を借りて学年全体が集まり、前回の授業で選ばれた各クラスの代表チームが京田辺市への政策提案のプレゼンテーションをします。
今回は京田辺市役所市民参画課の職員2名にもお越しいただき、政策提案を実際に聞いていただくという大変貴重な機会を得ることができました。
● 代表チームによる政策提案の発表
【A組 京田辺市 観光業についての政策】
京田辺市には一休寺や観音寺などの有名な観光地があるが、知名度が低いという問題に注目し、京田辺市独自の観光情報発信アプリを作る政策を提案。観光情報の掲載、観光スポットで楽しめるバーチャルスタンプラリー、観光スポットの歴史や見所の説明を聞ける機能等を盛り込む。アプリを市民へ広める手段やアプリの利用を持続可能にするための説明まで、政策を実行可能にするための説得力のある発表でした。
【B組 未来への拠点。京田辺】
京田辺市に既にある公共施設を有効利用するための政策案を紹介。①オンラインアンケート等で意見を集め、若者のまちづくりに対するアイディアを活用する ②リノベーションにより古民家民泊を作るなど、老朽化した建物の活用 ③京田辺市の多くの公園を活用したマルシェなどのイベントの開催。運営や管理を民間に委託することにより経費削減を提案しました。チームメンバーが一体となって発表に取り組む様子が印象的でした。
【C組 交通政策】
路線バスの利用者減少やサービスの水準が低いことに注目し、利用者への情報とサービスの提供を主な機能としたソフトウェア開発を提案。アプリを使ったバスに関する情報の入手、定期券発行、ポイント付与や無料乗車券を発行など、あらゆるサービスを向上させる。アプリを使えない利用者へは電光掲示板やモニターを設置するなどして対応する。パワーポイントの視覚効果をうまく取り入れて、提案の実現性や将来性についてもわかりやすく説明されていました。
【D組 シビックプライドを高める政策】
市民のシビックプライドを高めるために、市民が誇れる話題性のあるイベントを開催することを提案。事例として島根県出雲市のまちづくり人生ゲーム、東京都港区で取り組まれているシティプロモーションを紹介。また失敗事例も紹介し、より住民のニーズに合った政策プランを実行できるよう、京田辺市の既存のSNSを活用して宣伝し、良い反応があった政策だけを実行することを提案。より効果のある政策を意識した提案でした。
【E組 京田辺市の交通政策~バスの自動化~】
バスの利用者減少による運賃上昇、運転手不足、バス会社の収益悪化という悪循環を問題とし、バスを使い公共交通機関を利用しやすくすること、利用者の増加によるまちの活性化を目標として、バスの自動化を導入することを提案。事例としてソフトバンクが開発した自動運転バス、NAVYA ARMAを紹介。自動運転バスの安全性能の紹介や導入する場合の初期費用や経済効果などについて具体的な数字を用いて説明し、まちの活性化や新たな雇用の創出、人件費の削減など、様々な効果が期待できる提案でした。
【F組 公共施設の利用に関する政策提案】
余暇を活用することができる施設やイベントが少ないことから特に若年層に充実感や交流の機会を提供し、地域全体を活性化することを目標に、既存のイベント「たなフェス」をリニューアルすることを提案。持続性、環境への配慮、最低限のコストを意識しながら、イベントの頻度を増やしたり、イルミネーションやゲームコーナーを置き、運営は学生ボランティアを活用するなど、多くの若者にとって魅力的な内容を盛り込んだ、ワクワクさせてくれる内容の提案でした。
発表後、京田辺市役所よりお越しいただいた職員お二人から講評をいただきました。
〇 市民参画課 籏生様より
観光業、公共交通、シビックプライドなどのテーマは京田辺市が課題としている部分でもあり、また京田辺市は2030年以降、人口が減少し、今後対策を打っていかないといけない課題が挙げられ、とても興味深い意見やアイディアがあったとコメントをいただきました。また生産年齢人口が下がっている我が国で、国力を維持するために外国人労働者を多く受け入れており、これから多くの在住外国人と共生していくことが求められている中で、帰国生徒が多く、様々な環境で育ち、様々な考え方や価値観を持っている私たちに新しい日本を築いていく役割を担ってほしいとお話いただきました。
〇 市民参画課 日下課長より
自分たちが市民団体やNPO、NGOなどを作り、みんなで意見を出し合い自分たちの力でそれを進め、考えていくことはとても素晴らしいこと、と私たちの政策提案について関心を寄せてくださいました。また私たちが将来、行政機関で働いたり、自分が考えた政策を行政機関に実施してもらいたいと考えたときに、税金を使う場合は絶対的にそれをやらないといけない「理由」が要求されることを教えてくださいました。行政には基本的には失敗が許されず、予定していた結果を出さなければならない、という職員の方々のご苦労についてもお話いただき、私たちがこれから政策を考えるにあたって、さらにもう一歩深く考えることが大切であることを学ぶことができました。
【坂下教諭のコメント】
SSS講座は、アカデミック・スキルズ、まちづくりについて一通り学び、最後は政策を提言するという1年の流れでした。私たちは授業を受けてから一歩進んで社会に目を向けてみましたが、実際に行政を行うこととの間にはギャップがあり、それをどのように埋めていくかをみなさんはこれから高校、大学、社会人になって非常に勉強になるところです。今回の発表ではその一歩を踏むことができて、行政の方にもこのようなギャップがあることを考えるきっかけになったと思います。
発表はどのクラスの提案も個性があり、プレゼンテーションもとても上達していました。発表の仕方や結果だけに注目するのではなく、どのようにしてそこにたどり着いたかという過程をみることも大切です。今回は慣れない大学の教室で市役所の方が聞きに来られて緊張した様子もありましたが、実際に政策を実行している職員の方に自分たちの提案を聞いていただくという大変貴重な経験をすることができました。最後に講評をいただき、実際に行政が取り組むとなればどれくらい大変なことか、課題の解決は容易ではないことはよくわかったはずです。正解は1つではないこと、さまざまな意見を聞くことの大切さも学ぶことができました。
●SSSで学んだことのふりかえり
SSS講座の最後の課題はこの1年間で学んだことをミニレポートにまとめることです。知識・内容、アカデミック・スキルズ、社会との関わりの3つの観点から先生の話を聞き、ミニレポートにまとめてください。
【知識・内容について】
〇 吉田教諭
SSS講座では、みなさんがこれから生きていくうえで、まちづくりについて大事な視点を身に着けてもらったと思います。私は滋賀県の湖南市で育ち、湖南市で親の介護サービスを受けてから湖南市は良いまちなんじゃないか、と感じ、様々な視点からまちを見ることができるようになりました。まちづくりについて、シビックプライド、パブリックスペース、禁止ばかりではない看板など、いろんなことをこれまでの講義で学びました。また少子高齢化はこれから必ず直面する問題です。今回学んだことを始点にして、どこに住むか、そのまちに積極的に関わっていくことの大切さを知っておいてほしいと思います。
〇 朴元教諭
私は、私たちが社会的弱者の人たちにどのように目を注いていくか、ということに目を向けています。生徒のみなさんが政策の提案をしてくれましたが、必ず漏れてしまう人たちがいるのです。その人たちにどのように私たちが手をさしのべていくのか。本当に困っている人は身近にいます。私たちには何ができるか、どうしたらいいのか。いろいろな視点をもってまちづくりとは何か、考えてほしいと思います。
【アカデミック・スキルズについて】
〇 谷口教諭
まちづくりをテーマとして学んできた中でみんなのまちの見方も変ってきたと思います。自分の興味、関心あるところがあれば、まちを歩いていても見える景色が変ってくるし、他の勉強を通してもいろんなところに意識を向けてもらいたいと思います。また、学校の授業を通して学び方というものを学んでもらえたら嬉しいです。今日のプレゼンテーションやスライドのクオリティなどは、社会に通用するものもあるぐらい上手にできていました。何かすばらしいものを見たときに、「自分はできない」と思ってあきらめるのではなく、自分もそれを取り入れて、「まねる」ことをしてみてください。
〇 坂下教諭
アカデミック・スキルズの振り返りとして、問題に対する解決は、思い付きやひらめきではできません。また説得力が必要になります。SSSの講座では、講演の聞き方、良い質問の仕方、よい感想の伝え方、スライドやポスターの作成のコツ、探究・研究の流れについて学んできました。探究の流れの中で問題の分析をする際にはMECE(Mutually Exclusive Collectively Exhaustive)、すなわち「もれなくダブりなく」を意識することが大切です。つまり、政策について考えるときに、「含まれていない要素を作らない」ことと「重なっている要素を作らない」ことが大切です。問題の分析から発表までの知的な活動のプロセスは、大学での研究やその先にもつながっていくものです。これからも考え方や取り組み方の方法を学ぶことを大切にしてほしいと思います。
【社会との関わり】
〇 北川教諭
今年で私は京田辺に60年住んでいます。私の父親は91歳でようやく免許を返納しました。京田辺は車がないと不便なまちです。車に乗れなくなると買い物などの日常生活が困難になります。さきほど「もれなく」という話がありましたが、「もれなく」市民が良好に生活しやすいまちづくりをすること、若い人はお年寄りの立場を考えにくいが、そういう視点も大事です。もうひとつはグループワークの大切さです。グループワークは周りの意見を聞くことができ、自分が考えもしなかった意見が出てくることもある。グループワークで答えのない課題に対応する力も身に着けていってほしいと思います。みなさんが将来どのような仕事につくかわかりませんが、まちづくりは誰もがそこに住んでいる人は参加できます。まちづくりをする仕事につかなくても、SSSで得たものはこれから生きていくと思います。
〇 帖佐教諭
みんなのプレゼンも良かったですし、市役所の方の講評を聞けたこともよかったと思っています。いただいた意見に対して、一歩引いて「ではどうしたらよいか」と考えることが大事だと思います。自分と違う立場や考えの人の意見を聞いて、それを取り入れていくのはこの学校の生徒は得意なはずです。ぜひ頑張ってほしいと思います。また行政は失敗を許されない、という話を聞いて、「大変そうだな」と思いましたが、税金を払っている側からするとそのようにしてくださっていることは安心感があります。その一方で、「失敗しても、次はこうしたらいいかな」と考えられる社会を作っていくという考え方もできるかもしれません。それも含めてみんなが社会を作っていくということなのではないかと思うので、失敗が起こった時には、どういうプロセスでそういうことが起こったのか、ということを冷静に考えられる人であれたらいいと思います。
生徒のミニレポートより:
吉田先生が言っていたどこかの場所に行ったとき、物事の視点が変わったと言っていました。その話を聞いて、僕も外国などによく行くのですが、たしかに僕もそこの文化や、どのような国なのかと言うのを見るようになりました。まちづくりをするには自分とは違う意見を持っている人の事も受け入れて、違う視点で、物事を考えて広く、考える必要があると思います。
アカデミック・スキル。これは聴く能力、話す能力、見て変える能力、のことです。これらはスピーチなど自分の意思を伝えるときに役立ちます。元から素質があって持っている人もいますが、ないからって諦めないでください。これらの力は自分で育てていけるのです。自分の身の回りをしっかりと見て、人の行動を見て変えていけると思います。
私たちは若者世代であるからこそ、自分たちの世代のことに目を向けがちで例えば、スマートフォンを活用した政策などである。しかし今日本は少子高齢化社会であるこれからより深刻すると考えられているので若者世代にばかりフォーカスを当ててられない、私達と違う立場の相手のことを考える機会をもっと増やすべきだと思います。
I think the overarching theme for this years SSS classes was how to teamwork can be beneficial to creativity and generating ideas. This can be seen through the classes we had but also our presentations. We had to cooperate as a group to come up with a suitable resolution for an issue that is affecting the city of Kyotanabe. Working as a group meant we had more brains to work together on one thing and was very helpful.
SSSの授業を通して、どの視点から質問すればよいか、探究の手順、スライドの作成など将来(これから)使える技術をたくさん教えてもらった。特に質問の仕方はSSSの授業の初めの方から言われており、それ以外にも人との接し方など、人間性の部分でも多くのことを教えてもらった。1番最初の課題の自分の街を紹介するというものではどのように調べてスライドを作成すればいいのかあまりわからなかったが、SSS授業を通して、今では自信を持ってできるようになったと言える。
【終わりに】
1年間SSS講座を受講して、まちを見る視点が変わったり、私たちが住んでいるまちで自分にできることがないかな、と考える機会をもてるようになりました。またグループで意見を交換して発表し、レポートを書くなどのアカデミックスキルを習得することもできました。みなさんが実際にまちづくりに関わって生きていくための大きな一歩を踏み出せたと思います。1年間、お疲れ様でした!