WWLニュース

WWL

SSS(高校1年生)「人のつながりを重視したまちづくり」~上村 崇 京田辺市長

  • 2023.10.26
  • 講演会

今日の講座は京田辺市の上村市長にお越しいただき、京田辺市のまちづくりについて直接お話を伺います。前回の講座では京田辺市の歴史とまちの発展について先生の話を聞き、自分たちが通う京田辺市について関心を高めました。また事前に市長に聞く政策についての質問を準備し、今日の講演を楽しみに迎えました。

 

● 生徒たちによる司会進行

 

司会担当の生徒たちが今日の司会進行を務めます。上村市長は同志社香里高校、同志社大学のご出身です。今日は市長であり政治家の視点から、京田辺のまちづくりについてわかりやすく話をしてくださいました。

 

 

 

 

上村崇市長講演「人のつながりを重視したまちづくり」

 

京田辺市は・・・
・各地域で人口が減少している中、京田辺市の人口は60年連続で増加している全国的に珍しい地域。
・生産年齢人口は府内No.1で、活力のある元気なまち。
・京田辺市のまちづくりについては、北部、中部、南部の3つの地域に分けて各地域に必要な行政サービスを考え、進めている。
・鉄道が多く利便性がよいことがまちのメリットとなっており北陸新幹線新駅設置を見据え、そのインパクトを市全体の活力に生かせるようまちを発展させていく。

 

 

【上村市長の取り組み ~人と人とがつながり、参画できる仕掛けづくり~】

 

・地域子育て支援センター「はぐはぐルーム松井山手」の開設

利便性の良い駅前商業施設を活用した子育て支援施設。

上村市長:子育ては男女関係なく関わりをもつことができます。結婚や出産が全てではないけれども、こどもの成長を見るのは非常に楽しい。こういった支援施設で男女ともに子育てを楽しんでほしい。

 

・京たなべ「玉露庵」の開設

体験型観光情報発信拠点。旅行代理店、観光協会と京田辺市が包括的な連携協定を結んで集客など積極的に取り組む。

上村市長:行政だけでなく、民間の方々との協働によって生まれるものがたくさんあります。

 

・南部まちづくりセンター「ミライロ」の開設

駅前の銀行の跡地を利用し、地域住民が気軽に集える場所、市民と協働で魅力を創出する場所として作られた施設。カフェ、交流イベントスペース、まちライブラリー(寄付された本を借りることができる)を併設。子育てママのコミュニケーションの場、放課後は地域の小学生たちの宿題スペース、ワークスペースにも利用ができる。

 

 

上村市長:こどもや子育て世代、高齢者が集い、何か化学反応が起こらないか、何か新しい発想が出てくるのではないか、という期待を込めてつくられた場所です。行政がなんでもサービスを提供するのではなく、地域の課題に市民が気付き、多くの人が集まって何ができるのか、行政にどんな働きかけをしたらいいのかなど、市民による取り組みの最初のきっかけづくりや話し合いなどをここミライロで進めており、まちづくりの大きな役割を担っています。

 

・幼保連携型認定こども園「市立大住こども園」開園

「こども園」とは、文部科学省所管の幼稚園と厚生労働省所管の保育所の両方の機能をもつ施設で、全国的に広がっている。

 

上村市長:京都市内のこども園は空きが出てきているが、残念ながら京田辺市では待機児童がいて、まだまだ整備が必要だと考えます。

 

・市民まつり「たなフェス」の開催

2022年度から始まり、多くの市民が出し物や出店をする。市長自ら実行委員として参加し、どのような出しものや発信の仕方がいいか市民と話し合う。Youtubeやインスタで情報発信をして多くの人に参加してもらうことによって、まちづくりに関わってもらう。

 

上村市長:たなフェスはシビックプライドを高めるための取り組みです。多くの市民と対話をし、意見を聞きながらまちづくりを進めています。市民の皆さんの声を聞き、社会全体として、行政として、支えていかないといけないと考えます。

 

以上のように、上村市長は市民にとって暮らしやすいまちをつくるために市民とともに様々な取り組みをされていることがわかりました。上村市長の力強いお言葉からまちづくりへの熱い思いを感じとることができました。

 

また、講演の中で上村市長は「オープンなまちを作っていきたい」と話され、京田辺市とインドの交流促進の話をしてくださり、「様々な国の人と交流をして市民のみなさんといいまちを作っていきたい。特に同志社国際のみなさんのように多様なバックボーンのある方たちがまちづくりに参加してくれるとうれしい」と私たちにメッセージをおくってくださいました。私たちひとりひとりがどのようにまちづくりに関わっていけるか、改めて考えるチャンスとなりました。

 


【 市長への質問 】

講演の後半、上村市長は生徒たちが事前に準備をした質問に答えてくださいました。また、当日にもたくさんの挙手があり、ひとりひとりの質問に丁寧に答えてくださいました。その一部をご紹介します。

 

Q1. 第4次京田辺市総合計画のなかで、SDGsの視点を最大限に活かしたまちづくりをすると書かれていましたが、具体的にはどのような政策のもとどのような計画や活動が進められているのですか? そして、私たちが通う学校がある京田辺市を良くしたいと思うので、私たちにもできることや、心がけておいてほしいことはありますか?
A.  私がSDGsの項目のなかで一番大切にしないといけないのは多様性だと思っています。多くの人がこのまちに集い交流することによって多くの化学反応が起こる。そのことがまちの発展に必ずつながっていくと思っているので、多様性をどう求めていくかが大変重要だと思っています。まちづくりは住民ひとりひとりがプレーヤーです。ひとりひとりがやれることをやってまちが発展していくと考えています。京田辺市は都心で働いて帰ってくる人が多い場所です。日々の暮らしの中での気付きを行動に変えていける市民の方々がどれだけ増えていただけるかが、まちの価値を高めるための大きな課題だと考えています。その解決策としてまちづくりセンターをつくったということがあります。

 

Q2. 駅周辺以外のまちづくり、例えば高齢者の交通手段や地域の足として具体的にどのような対策がとられていますか。
A. 京田辺市には40以上の区・自治会があり、全国的にもめずらしくすべての区・自治会にバス路線網があります。しかしバス路線の維持が難しいことが課題です。政府の動向が気になるところでありますが、もしライドシェアを積極的に進められたら、交通困難地域の解決策になるのではと思います。これからのまちづくりの中で議論を進めていきたいと考えます。

 

Q3. もし北陸新幹線が京田辺市に開通したら市にアドバンテージがたくさんあると思いますが、それを最大限生かすためにどのような政策をとろうと思っていますか。
A. もし新幹線が開通したら、松井山手駅では次の時代に即した整備やまちづくりのやり直しが必要だと思っています。海外では、ある方がそのまちを離れても、その家に次の方が住む文化によってまちが継続していきますが、日本ではあるところに住宅地を作っても次の世代の人はそこに住まず高齢化がすすみ、まちがゴーストタウン化するという事例が数多くあります。そこでわたしたちは、まちを継続させていくためにまちのredesignやrebuild をすることによって魅力を高めて発展させ、持続可能性を模索していきたいと考えます。
新幹線が来ることが目的なのではなく、まちづくりのひとつのツールとして新幹線を活用できたらと思っています。それが市民にとってのベネフィットにつながると考えます。

 


 

次々と質問の手が挙がり、生徒たちのまちづくりへの関心の高さがうかがえました。今回の講演は普段の授業では体験できない、豊かな学びの時間となりました。大変お忙しい中、今日はこのような機会を作ってくださり本当にありがとうございました。

 

 

【生徒たちの感想より】

・本日は貴重なお時間を私達のために割いていただき、ありがとうございました。 市長さんの講演で、また新たなものの捉え方や知識を得ることができました。ミライロや交通の利便性についてのお話はもちろんですが、私が特に印象に残ったものは、行政を中心に据えた考え方ではなく、市民の交流があってこそのまちづくりや政策や、些細なきっかけから起きる化学反応に期待する姿勢です。観光面ではあまり知られていないまちながらも、京田辺市のお茶を飲める玉露庵など、きっかけづくりともいえる施設を建設するといった政策は私にとってとても新鮮でした。また、講演のはじめに市長がおっしゃっていた「情報は自ら取りに行かないとなにもない」というお言葉が心に残りました。本当にありがとうございました。

 

・今日の京田辺市長の上村さんの話を聞いて、個人的に一番印象に残ったフレーズが、「行政は、市民の痒いところに手を届かすものではなく、ローカルに発生した問題を市民が発見し、行政と協力することで解決を図るのだ」というものでした。このフレーズは、僕のまちづくりに対する考え方を大きく変えました。元々僕は、まちづくりに関して、市民が、「こうしてほしい」という要望を行政府に提出し、行政府がそれに答えるという形態を想像していました。ですが、実際の職務の話をもとにして、行政の第一人役を市民が担うことが大切だと気付かされました。よく考えれば当たり前のことだけれど、いざ僕が自分の地元になにか貢献しているのかと問いかけると、なかなかYesとは言い難いです。今日の講演を聞いて、少しずつ、自分の市の取り組みに興味を持つことができました。