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SSS(高校1年生)パネルディスカッション~大阪公立大学武田重昭先生を再びお招きして

  • 2022.11.05
  • 授業

以前、「まちづくり」について講義をしていただいた武田重昭先生を再びお招きして、改めて生徒たちの疑問や意見についてパネルディスカッションをしていただく機会を持つことができました。舞台に上がった生徒は8名、6名がパネラーとし

て、2名が司会としてです。これまでの半年間の学びを振り返り、またパネラーと武田先生のディスカッションを通して、皆で2つのテーマについて考え、最後は欧州と日本のまちづくりにおける違いについて意見をまとめたいと考えています。

パネルディスカッションの後には、武田先生による「フィールドワークの方法」について講義もしていただきました。

 

●パネルディスカッション


                  【生徒パネラーの住んでいる(住んでいた)街紹介】

生徒1:奈良県在住、小学生の時アメリカイーストチェスターで生活

生徒2:京都府木津川市在住

生徒3:京都府京田辺市在住、中学卒業まで沖縄県宮古島で生活

生徒4:滋賀県草津市在住、以前はドイツニュルンベルク、アメリカで生活

生徒5:アメリカで3年間、カザフスタンで3年間生活

生徒6:京田辺市在住、以前マレーシア、タイに計7年間生活


【テーマ1】

欧州では一般化しているが、街をよくすることによって自分の生活が良くなるという考え方が日本では新しい考えとして主流化していないのはなぜか。


生徒4「欧州では、宗教が生活に根付いていて、定期的な教会での集まりを通して地域の人たちや地域との繋がりがもともと深いのではないかと思います。」

生徒3「アメリカではご近所の人たちとの関係が深かったが日本では薄いと感じています。また日本では宗教での連帯感がなく、それぞれがバラバラな気がしています。」

生徒2「日本は自分の土地はきれいに掃除もする習慣があっても周りは気にしないところがあると思います。公共の場は行政がするという感覚が強そうです。」

生徒1「日本ではまちづくりに関して、自分がするというより誰かがしてくれるものという感覚が強いと思います。」

司会「自分の行動で街がよくなったという経験はありますか?」

生徒2「地域の清掃活動に参加したことがあります。」

生徒4「滋賀県の用水路での清掃活動があり、その後は個人でも気が付いた人がするようになったことはよいことだと感じました。」

生徒3「宮古島ではビーチでのボランティア清掃活動が盛んです。地域の大人が中心に活動が広がっています。」

生徒1「小学校で近隣の山に登り、清掃活動がありました。」

 

【武田先生から】

生徒たちの感じていた日本と欧米の宗教感の違いを良い視点だと認め解説してくださいました。欧米は人が神様となり一神教であることに対して、日本では古来より万(よろず)の神といい、神様は自然全般に存在するものです。欧米で、自然は自分たちのために役立てるものという捉え方に対して、恵も災害もすべて神様から与えられていると受け止めてきた経緯がある日本では、自然を敬い、私たちが変えるなんて罰当たりだとう意識が環境に対する積極性を失わせているという文化的な側面もあるのかもしれません。

また日本が近隣との関わりが少ないとうことについては、日本でも戦前までは助け合いなど密なコミュニティーが存在していたところ、戦後に欧米を目指そうという中でコミュニティーが揺らぐ都市の生活になっていったという経緯を説明してくださいました。

そして、大切なのはこれから、ただ単に欧米や欧州の真似をすればいいというわけではなく日本らしい解決、対策を立てていけるようなアイディアが出てくることを期待しているとアドバイスをくださいました。

先生はちょうど翌日に地域の清掃活動に参加される予定があるそうです。こういった昔から続いてきた地域の活動に若い人たちも参加することは地域の人たちも喜び、様々な年代間で良い交流ができる中、課題や解決策も見つかるのではないかとおっしゃいました。

 

⇒まちの環境を整えることからまちづくりに参加できている!

⇒本来の日本では、郷土愛もあり地域のコミュニティーもとても密であった。欧米化で地域の関係が希薄になってしまった面がある!これからを見据えると、やはり日本らしいまちづくりや解決策を若い人たちもアイディアを出し合って考えていくことが大切!


【テーマ2】

京都のように伝統的な街並みが残るところで、景観を1から作るわけにもいかない。すでにある街を住民が美しいと感じ、楽しいと思える場所にするために、都市計画はどうあるべきか。


生徒6「住民と行政の両方の意見を聞くことが大事だと思います。桜の木を撤去したい行政と残したい住民の意見が対立したときは、どちらかが完全に妥協するのではなく双方が納得する形の解決があればいいなと思いました。」

生徒5「京都の伝統的な古い町並みはやはり魅力的だと思うので、そういったものを残しつつ新しいレストランなど作るのはいいと思います。」

生徒4「誰もが住みやすい街を作るには、行政と住民が連携した取り組みが必要だと思っていて、でも例えば私たち高校生が行政にアプローチするのはハードルが高いイメージ。もっと意見の交流が気軽にできればいいと感じます。」

生徒3「京都に来て出身の沖縄を説明するうちに、それまで嫌いだと思っていた沖縄がとてもいいところで好きだという気持ちが芽生えました。客観的にその街をみる立場から、その街の都市計画を考えるということも意味があるのではないかと思いました。」

生徒2「自分の住んでいる地域のことを案外知らないのではと思いました。若者はネットで情報交換することができるので、もっと地域の情報を交換することで、よい都市計画のアイディアも生まれるのではないかと思いました。」

生徒1「その地域に住む人たちとの密接な話し合いが必要だと思っていて、一方的な提案ではなく、様々な面からまちづくりに取り組むことが必要ではないかと感じました。」

生徒4「日本が嫌なわけではないのに、イメージで、アメリカはいいな、楽しそうということを言われたことがあります。日本人はそういうイメージに囚われすぎ?」

 

【武田先生から】

金曜日の夜の楽しみとして、グッドムービーを見に行くか、ナイスパーティーを開くかという問いかけをご紹介くださいました。グットムービーは選択肢の中から選べばいいのですが、ナイスパーティーは自分で開かないといけません。誰を呼び、何を食べ、どんな出し物をしようか考えないといけません。そこで日本人はグットムービーを選びがちです。今ある選択肢からいいものを選ぶのがいいことだと考えがちです。ナイスパーティーを開こうとする人は少ない傾向にあると感じます。それが都市計画においても同じことではないかと思っています。そして生徒たちの進路においてもこうおっしゃいました。進路もそうです、人生の選択はある中から選ぶということだけではなく、自分は本当に何がやりたいのかというナイスパーティーを開かないと大きな人生にならないのではないでしょうか。そのマインドが都市計画に対してもすごく重要なことではないかという気がしています。また、ないものを残念がるよりもあるものを活かすことも可能性が大きく広がることだと感じます。

京都の街については、形、佇まいが美しいというのはもちろんあるけれど、そこで暮らす人たちの暮らしぶりが大切で、楽しい暮らしを作っていける市民かどうかが大事です。行政と市民のよい関係作りで、納得いく話し合いをすることで平等は難しくても公正に物事を決めることはできます。行政も市民の延長線上、自分たちのしていることが行政に繋がっているということも念頭に置くことです。リノベーションといいますが、壊して新しくするのではなく、環境の面からも建物は残し伝統的な景観を守りつつ、新しい使い方を考えることで暮らしを豊かにするという時代になっています。

 

⇒立場を超えたディスカッションや話し合いこそがよいまちづくりの一番大切な要素!

⇒ナイスパーティーを開こう!!!

 

●フィールドワークについて

武田重昭先生に、普段どのようなフィールドワークを実施されているのかお話を伺い、生徒たちの今後のフィールドワークの参考にさせていただくことになりました。

 

【武田先生のお話より】

都市はそれぞれ違います。まちづくりは実験室では作れません。「歴史に学ぶ」か「他都市に学ぶ」、そして机上で学ぶことと現場で学ぶことは、学べば学ぶほど関係性や共通点が増えていくことを体感してもらえたらいいと思います。これはフィールドワークの大きな意義です。都市はいろいろなものが影響を及ぼし合って複合的に成り立っているので、そこを理解するために調べます。それぞれの関係性が都市の醍醐味でもあります。さらには、都市は生きています。過去現在、そして未来はどうなっているか時間軸があるところが難しいところでもあり、面白いところでもあります。1つの取り組みにより、暮らしが変わっていくのを実際に見て、変化を理解することも大事な都市を捉える視点です。正しく自分で理解するために、また新しい発見のためにフィールドワークに行きます。


【大学のゼミナールに求める8つの力】

FWもこの全てのステップに当てはまる

インプット:  聞く力         →都市とは何か

課題発見力       →都市の魅力を探る

情報収集力       →都市を集める

情報整理力       →都市を整理する

読む力         →都市を読む

データを分析力      →都市を分析する

アウトプット:書く力          →都市を書く

プレゼンテーション力   →都市を伝える


ゼミでは講義を聞くという学びではなく、自分で主体的に学ぶということをします。そのための8つの力です。これらは大学での学び方ということだけではなく、創造的な仕事をするとき、豊かに生きていくために求められるスキルでもあります。限られた時間で、フィールドワークの手順として、ひとつひとつのステップについて大事な点を解説してくださいました。現場で理解を深めるために正しい情報をえるための準備、自分なりに理解する必要性、学んだことを論理的に整理すること、その結果を取りまとめて伝えるところまで、このプロセスをすべて経てフィールドワークへ行った成果だといえます。


~まちを読む(理解する)ための4つの視点~

地域文脈を解読するための手がかりとして、街を様々な「層」の重なり合いであると仮定して4つの軸の重なり合いでみると理解しやすいです。

自然軸(自然の構造)/空間軸(空間の構造)/生活軸(生活の構造)/歴史軸(どう変わってきたか)


京田辺市の市街地図と都市計画マスタープランを例に情報の捉え方を詳しく教えてくださいました。地図の見方次第で大変多くのことを理解できると知りました。

 

●放課後のランチ会

放課後には、希望者の生徒たちと先生とランチを囲みました。武田先生のお話を聞いて興味を持つようになったという生徒も増え、とても気軽にお話をさせていただける、ディスカッションに続き大変貴重な機会となりました。

武田先生、今日はお忙しい中にも関わらず、生徒たちのためにお時間を作ってくださり本当にありがとうございました。