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SSS(高校1年生)街の住みやすさとは

  • 2022.06.04
  • 授業

●大阪公立大学 准教授 武田重昭先生講演の質問について

前回の課題であった「先生への質問を考えてまとめる」について、担当教員全員で読みました。質問は事前に武田先生にお届けしようと考えています。そこで、これはよくないという例とよく考えられたよい例をいくつかあげて、一緒に考えてみたいと思います。

 


                 よくない質問の例

【専門家である講演者に対してふさわしくない?】

・一番魅力的なまちは?

・街をきれいにするために取り組むべきこと

・この授業は将来何に役立つか

【専門家である講演者に対して失礼ではないか?】

・人生を振り返ってどう思うか

・なぜ今の仕事をしようと思ったか

・今までの人生で印象的だったことは何ですか

【非常識ではないか?】

・何の教科の先生ですか

・好きなスポーツは何ですか

・先生の名前の由来は何ですか

【講演を聴く姿勢がまったくない?】

・特にない

・何をするのですか

・初めて知ったことがあってびっくり


これらは、講演のために時間をかけ準備をして来てくださる講演者の先生に対して失礼だと感じるものです。質問のマナーについては初歩的なところですが、大切なことは先生の研究内容を事前に把握し、そのうえでこの実際にお越しいただける貴重な機会にここでしか聞くことのできない疑問を先生にお伺いしたいと思います。

また一方では、しっかりと考えられた個性のある質問も多くありました。その例も紹介して、まずその差を感じてみてください。そして自分の質問についても改めて振り返って考えてみて欲しいと思います。


よく考えられていた質問の例

【基本的な考え方について】

・すべての人にとって魅力的な街は実現できるか、何から考えればよいか。

・住みやすい街を研究して、考え方はどのように変わりましたか。

・さまざまな研究をする際に、大切にしていることや自分のルールはありますか。

【事例を知りたい】

・先生が考える、取り入れたほうが良いが日本にはまだない街のルールや仕組みがあれば教えてください。

・よいまちづくりによって、その街の雰囲気や人々はどう変わったのか。

・他にはないような試みで成功している街があれば教えてください。

・先生の離散とういう考え方に共感しました。人付き合いが苦手でも地域とうまく関われる方法で成功した例を教えてください。

【展望や考え方】

・先生が思う、自分の人生も魅力的になるような街はどのような街ですか。

・魅力的な街を継続させるためにどうすべきだと考えますか。

・何を魅力的と思うかは人により違うと思います。どのように考えますか。

・ソトノバラジオで急激な盛り上がりより少しずつ街を良くしていく方がよいとおっしゃっていましたが共感できません。急激に盛り上げて持続できるようにするのがベストではないでしょうか。

・「シビックプライド」では、ヨーロッパの都市は魅力や個性のアピールに努めているとありますが、比較して日本の街の個性は薄いのでしょうか。

・オンラインでも人とつながり、パブリックライフをおくれるようになった今、プライベートライフをおくることの大切さが薄れていっているように感じますか?


●住みやすい街ついて一緒に考えてみましょう

【問い:ディズニーランドが好きな人も多いと思いますが、ずっと住みたいと思う人もいるでしょうか。ハウステンボスはどうでしょう。】

訪ねるのと住み続けるというのは、やはり違うと思います。来週講演をしていただく武田先生は「緑地計画」「パブリックライフ」などを研究されているのですが、まず今日は「住みやすい街」を展望してみようと思います。

人によって優先順位は様々ですが、いくつかの条件の下に住む場所を決めると思います。

○住みよさランキング2021総合評価トップ50(東洋経済新報社2022年)

「利便性」「安心度」「快適度」「裕福度」の4つの視点から、信憑性ある20の統計データから算出し、項目ごとの順位と総合順位を出した表があります。

【関西の総合上位】想像した結果と比べてどうでしょう?

大阪市:安心度は801位/812区と下位だが、他の3項目で健闘、利便性は8位→総合1位

草津市:大阪市と同じく安心度は724位と下位だが、他の3項目で高順位→総合2位

葛城市:大阪市草津市とは対照的に利便度は641位ながら、安心度、快適度共に上位→総合3位

 

○住みたい街ランキング(リクルート住まいカンパニーSUUMO 2022)

実際に住みたいと思う街を人々のアンケートから算出した表です。ランキングから、自分の街が上位だとどこか誇らしい気持ちになり、下位または入っていないと少し残念な気持ちになります。興味深いのは、上の統計から算出された住みよさランキングとの違いです。実際に人々が感じる住みたい街と統計から算出される住みやすい街は一概に共通していないことに気付きます。

 

上位を占める、横浜、吉祥寺、大宮など関東の街について、関東に詳しい松野教諭の解説を聞きました。この3都市については、交通の便が良いこと、そして首都圏の発展とともに経済的な発展があったこと、若い世代が多く文化の発信地になっていることが結果につながっているとのことでした。また4位以下も10位までは関東が独占、山手線に面し利便性や商店が多い街が多くみられます。

 

●世界の住みよい都市に学ぶ「住みよさ」と「住みやすさ」の間

自治体国際化協会による住みやすい都市ランキングを紹介します。さまざまなファクターがこういったランキングをしていますが、比較的わかりやすいので紹介します。

 

英国エコノミスト誌の調査部門であるエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)による「世界で最も住みやすい都市ランキング」では毎年「住みやすさ」を世界の140都市を対象に、5つのカテゴリの30項目について数値化し、順位をつけています。どのような指標が用いられているのかに注目してみましょう。



5つのカテゴリ

安定性(25%)・医療(20%)・文化環境(25%)・教育(10%)・インフラ(20%)



オセアニア、北米、欧州が上位に挙がっています。調査対象の140都市には、日本からは東京、大阪しか含まれていません。正確さの面からは抜け落ちている部分があるのは事実です。また駐在者を対象としたランキングでは、あくまで駐在者を派遣するにあたっての指標となっているところもあります。「住みやすさ」はその地域への容易な入りやすさ、そして「住みよさ」は現に住んでいる住民の満足度などだといえます。

 

●ヘルシンキの魅力とフィンランドの子育てに関する制度について

いくつか紹介されているランキング上位の都市で、ヘルシンキについて吉田教諭に解説してもらいました。世界で最も住みやすい都市ランキングにノミネートされている他、国単位では国際NGOセーブ・ザ・チルドレンの母の日レポートの母親指標においてフィンランドは1位に選ばれています。

 

・ヘルシンキの子育て支援

ネウボラというまちの子育て支援では、妊婦の検診は無料、手厚い専門家のサポートがあります。担当制であるため、同じ担当者が妊娠期から子供が小学生になるまで継続的にサポートします。

・充実した社会保障

母親手当として育児関連グッズ約50点もの配布があります。また育児による休業制度は産前50日から、そして同時に取得できる父親休業制度は3週間取得可能です。これらの親休業は有給です。父親休業の取得率が8割を超えていて、日本での1割強と比較してもその普及率が高いことがわかります。これでも日本は12年で約10倍に増えた結果です。

こういったフィンランド特有の充実した子育て支援をはじめ、教育制度、男女平等政策が住みやすさの大きな理由となっていて、高い税率においても国民はその税金がしっかり還元されていると感じることができていることは満足感につながっています。

【問い:住みたいまち、住みやすいまちなどありましたか。このSSSが始まった当初に、答えた住みたい街から変化はありましたか。】

住みやすさは人それぞれだということもわかりましたが、ランキングやその分析から、自分の住んでいる街を思い返し、将来住む街を想像して、「住みやすいまち」について改めて考える機会になりました。来週はいよいよ武田重昭先生のお話を伺います。これまでの講座や感じている疑問を振り返り、それぞれがしっかりと準備をしましょう。