SSS(高校1年生) まちづくり
- 2021.05.22
- 授業
まちづくりについてどんなイメージを持っていますか?街は様々ですが、自分が街を創っているという感覚のある人は少ないかも知れません。しかし、誰もがどこかの「まち」に住んでいます。住んでいる街は好きですか?例えば大学生になった時(たったの3年後!)に1人で住むことになったとしたら、どのようなところに住みたいと思うでしょうか。
●理想の街について一緒に考えてみましょう
「住みたい街とは?」
駅近・安い・静か・食べ物美味しい・スーパー近く・Uber Eatsの配達圏内・自然(公園がある)・生活圏内に全てが揃う・地盤がいい・病院が近い・ご近所が仲良い などなど(生徒たちの意見より)
人によって優先順位は様々ですが、いくつかの条件の下に住む場所を決めると思います。
○住みよさランキング(東洋経済新報社2020年)
「利便性」「安心度」「快適度」「裕福度」を、信憑性ある統計データから算出し、項目ごとの順位と総合順位を出した表があります。
【関西の総合上位】想像した結果と比べてどうでしょう?
大阪市:安心度は798位/830と下位だが、他の3項目で健闘、利便性は8位→総合1位
葛城市:大阪市とは対照的に利便度は633位ながら、安心度、快適度共に上位→総合2位
草津市:大阪市と同じく安心度は685位と下位だが、他の3項目で高順位→総合3位
箕面市:裕福度を筆頭に、快適度、利便性、安心度の順番で平均的に高順位→総合4位
○住みたい街ランキング(リクルート住まいカンパニーSUUMO 2021関西版)
実際に住みたいと思う街を人々のアンケートから算出した表です。ランキングから、自分の街が上位だとどこか誇らしい気持ちになり、下位または入っていないと少し残念な気持ちになります。興味深いのは、上の統計から算出された住みよさランキングとの違いです。実際に人々が感じる住みたい街と統計から算出される住みやすい街は一概に共通していないことに気付きます。
【関西の上位】みんなの街はどうでしたか?
1位 兵庫県西宮市/2位 大阪市北区/3位 大阪市中央区/4位 神戸市中央区/5位 大阪市天王寺区/6位 大阪府吹田市/7位 京都市中京区,神戸市東灘区/9位 兵庫県明石市/10位大阪府豊中市
自分の住んでいる街を改めて振り返ったり、将来住む街を想像してみたり、とても活発に意見を出し合った生徒たち。住む人達が意見を出し合い、まちづくりに参加することがシビックプライドを育てる原点にあることに少し気付くことができました。こうして街が創られていけば、なんだか楽しそうだなと感じることができました。
●大阪府立大学 准教授 武田重昭先生の講演について
実際まちづくりに私たちはどのように関わっていけるでしょうか。この講座では、まちづくりをテーマとし研究され、携わっている方をお迎えしてお話を伺う予定です。講師の方は、人生と都市を魅力的にする『パブリックライフ』について研究をされている大阪府立大学の武田重昭先生です。この大変貴重な機会に、武田先生からどのようなことを学ぶのか、そしてどのような準備をして臨めば良いでしょうか。本日のレジュメを通して一緒に考えます。みなさんに問う箇所もあるので当たった人はぜひ自分の考えを皆にシェアしてください。
『大阪府立大学 生命環境科学研究科 緑地環境科学分野
武田 重昭先生の研究内容について』
住宅団地やニュータウン等の計画的に整備された集住環境におけるオープンスペースをはじめとする都市の緑地空間を対象として、その空間形態とそこでの生活行動や運営の仕組みとの関係性を分析し、保全・継承すべき緑地環境の特質を明らかにするとともに社会状況の変化に対応した活用の方法や生活者の新しい関わり方によるマネージメント手法について研究を行っています。 (大阪府立大学ホームページより)
人生と都市を魅力的にする『パブリックライフ』について研究しています。UR都市機構、兵庫県立人と自然の博物館を経て、現職。共著書に「シビックプライド」「いま、都市をつくる仕事」「都市を変える水辺アクション」ほか。共訳書に「パブリックライフ学入門」
(武田先生のTwitterアカウントより)
自分だけが心地よく魅力を感じているのではなく、街全体が魅力的、そこに住む皆が心地よく生活できること、それがパブリックライフです。武田先生のご研究の中にはまちづくりに関するこういったワクワクするKeywordが登場します。
問い:魅力的なまちとはどのようなまち?住みやすいまちとは違う?
生徒「他にはない、何かシンボル的なものがあるまち」
生徒「最先端のリサイクル施設など環境に配慮しているまち」
○なぜ武田先生に講演にきていただくのか
武田先生が共著者、共訳者のお1人でもある次に紹介する2冊の本を読んでみると2つのテーマについての考察を読み取ることができます。
★魅力的な都市とはどのような都市か
『シビックプライド 都市のコミュニケーションをデザインする』(宣伝会議、2008年)
例えばヨーロッパは、小さな都市もそれぞれ特色があり、また趣があります。住民が関心を持って関わっていて、まちに愛着を持っています。この著書の中では、そのプロセスに注目し、都市の再生政策を進める上で市民の街づくりに関するコミュニケーションがとても重要なこと、そしてそれがあって初めてより多くの市民の共感のもとに計画が進み、人々の都市に対する愛着が生まれることについて解説されています。
★パブリックライフが注目されるようになった歴史的背景
『パブリックライフ学入門』(鹿島出版会、2016年)
今から60年も前に、NYの都市計画についてジェイン・ジェイコブスが味気ない空虚な未来都市像を批判したことが当時は革命的であったこと、そして現在では都市を使う人々の姿が政治家やプランナーに見えるようになり、都市住民=パブリックライフが活性化するよう、積極的に計画することができます。かつて軽視されたパブリックライフは、21世紀に入り今では都市の魅力に大きな影響を与える確立した分野になりました。
問い:あなたの理想の街とはどのような場所ですか?
生徒「きれいなお花畑のあるまち」
生徒「近隣住民皆が仲の良いまち」
問い:豊かなパブリックライフをデザインすると聞いて、どのようなことを思い浮かべますか?また、パブリックライフが充実した街に住みたいと思いますか?
生徒「地域の人で話し合える街 / イメージが湧かず住みたいかわからない」
生徒「地域のイベントが多い街 / 住民として祭りに参加したい」
○まとめ
人によって理想の街は違うもの。そして、イメージするパブリックライフも様々です。でもそういった人達が自分のまちづくりのために有意義に意見を交わし、街を創ることができれば楽しそうだなとも思いませんか?住む人達が積極的に意見を交わすことができる街の仕組みや制度が整っていけばとても理想的だと言えそうです。それでは実際に武田先生のお話を伺うのを楽しみにしっかり準備をしましょう。